研究課題/領域番号 |
15K10613
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
後藤 章暢 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70283885)
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研究分担者 |
長屋 寿雄 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60464343) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドラッグ・リポジショニング / 膀胱癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、表在性膀胱癌に対するドラッグ・リポジショニングの考え方を活用しつつ既存薬剤を応用したQOL重視の新規治療法、予防法の開発を目指す。表在性膀胱癌では経尿道的膀胱腫瘍切除術とBCGや抗癌剤の膀胱内注入療法が行われる。しかしながら、BCG注入療法では重篤な副作用があり、また、抗癌剤注入療法では重篤な副作用はないがBCG注入療法ほどの治療効果が得られない。膀胱癌は再発の繰り返しにより浸潤性に進行しやすく、その治療法としては膀胱全摘術が一般化しており、それに伴って尿路変更術が行われることで患者のQOLが著しく低下するという問題がある。これらのことから、表在性膀胱癌の経尿道的膀胱腫瘍切除術とともに行われる新たな治療法が求められている。 α1ブロッカー投与患者では膀胱癌や前立腺癌の発症が有意に低下することが報告されていた。我々は前立腺肥大に伴う排尿障害の治療に用いられているα1ブロッカーであるナフトピジルがin vitro及びin vivoにおいて膀胱癌細胞株に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。一方、ナフトピジルの空腹時における未変化体の最高血中濃度は服用後1時間未満であり、さらに服用6時間後での未変化体の血中濃度は最高血中濃度の1/10程度に低下しており、そのほとんどは肝臓で代謝され、尿中に排泄されることが報告されている。そこで、ナフトピジル代謝産物には膀胱癌に対して抗腫瘍効果を示す物質があると考え、ナフトピジル代謝産物群での抗腫瘍物質の同定とその抗腫瘍効果について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低悪性度膀胱癌細胞株KK47、高悪性度膀胱癌細胞株T24に対する抗腫瘍効果について検討した。ナフトピジルよりも強い抗腫瘍効果を持つナフトピジル代謝産物を複数同定し、その中でも最も強い抗腫瘍効果を持つ物質HUHS190は前述の二つの膀胱癌細胞株に対してアポトーシスを誘導することを明らかにした。 また、アポトーシス誘導メカニズムを検討するために、ナフトピジルおよびHUHS190処理した細胞内のシグナル伝達を調べた。その中で、アポトーシス抑制タンパク質の一つであるAktのリン酸化レベルが低下していた。この結果からナフトピジル及びHUHS190のアポトーシス誘導経路の一つはAktの阻害であることが推測される。 これらの結果は、ドラッグ・リポジショニング研究の分野での成果としては画期的であり、今後のドラッグ・リポジショニング研究では薬剤自体だけでなくその代謝産物も詳細に検討する必要性があることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
膀胱癌細胞株に対してナフトピジルやその代謝産物の中でも最も強い抗腫瘍効果を示すHUHS190を見いだした。これまで行ってきたin vivoでの抗腫瘍効果の確認を早急に行う予定である。 また、ナフトピジルやHUHS190はAkt阻害を通じて、アポトーシスを誘導していることが考えられたことから、アポトーシスに関係するAkt基質を調べることでより詳細な検討を行う予定である。さらに、HUHS190の抗腫瘍効果の他のメカニズム解明を目指し解析を行い、医師主導型臨床試験に向けた準備を始めて行きたい。
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