研究課題/領域番号 |
15K10614
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
末金 茂高 久留米大学, 医学部, 准教授 (40235833)
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研究分担者 |
野口 正典 久留米大学, 付置研究所, 教授 (10140691)
伊東 恭悟 久留米大学, 付置研究所, 教授 (50125499)
守屋 普久子 久留米大学, 医学部, 助教 (80449917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がんペプチドワクチン / 尿路上皮がん / バイオマーカー / サイトカイン / 生存率 |
研究実績の概要 |
HLA-A2陽性の癌患者を対象として開発された12種類、HLA-A24陽性患者用14種類、HLA-A26陽性患者用4種類、およびHLA-A3スーパータイプ(HLA-A3, -A11, -A31, -A33)陽性患者用9種類のワクチン候補ペプチドのうち、当該患者のHLA型に対応し、かつワクチン投与開始前の患者血漿中に抗ペプチド抗体(IgG)が存在することが確認されるペプチドに限定して、最大4種、抗体値の高い順に選択して投与するがんペプチドワクチン療法(Personalized peptide vaccination: PPV)の臨床試験を実施中である。なお、PSAおよびPSMA由来ペプチドは、尿路上皮がん組織で発現が確認されていないことから選択しない。また、尿路上皮がん組織におけるPAPの発現頻度も低いことから、前立腺がん以外の患者に対しては、PAP由来以外のペプチドを優先的に選択する。 血漿中の抗ペプチドIgG抗体は、Luminex®システムを用いたサスペンジョンアレイにて測定する。測定結果は目的ペプチドに対する抗体価と陰性対照(バックグラウンド)に対する抗体価(蛍光強度単位(FIU)で表記)の差を算出し、血漿100倍希釈時の蛍光強度単位で表記する。ワクチン候補ペプチドに対する抗体が1種類もしくはゼロの場合には適応外とする。第2クール以降の治療においても第1クール同様にペプチドを選択し投与する。 現在、標準治療抵抗性尿路上皮がん患者に対するPPVにおける第II相臨床試験(UMIN1854)を実施中であり、ペプチド特異的抗体の変動を検索し、全生存期間との相関性を検証し予後予測因子を明らかにする。また、尿路上皮がん患者に対するPPV療法のバイオマーカーを検索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、尿路上皮がん患者136例にPPV療法を実施しているが、プラチナ系抗がん剤治療抵抗性の転移性上部尿路上皮がん患者(metastatic upper tract urothelial carcinoma: mUTUC)48例を対象に詳細に解析した。PPV単独群は20例で、PPVと抗がん剤併用群は28例であった。年齢はそれぞれ中央値で66.5(40-82)、63(32-79)歳で、男女数は13例、23例と7例、5例であった。全例がプラチナ系抗がん剤治療を施行され治療抵抗性の有転移症例である。全症例の生存期間中央値(MST)は、7.3か月(95%CI, 5.3-13.3)で、PPVと抗がん剤併用群のMSTは13.0か月(95%CI, 5.7-17.5)であり、PPV単独群のMSTは4.5か月(95%CI, 1.7-10.1)であった(p=0.080)。PPV1クール目の6回投与完遂できた37症例において、ペプチド特異CTL誘導された患者は、誘導されない患者より有意に生存期間の延長を認めた(HR,0.37; 95%CI,0.16-0.85, p=0.019)。PPVにおけるペプチド特異CTL誘導のバイオマーカーは、B-cell activating factor(BAFF) (OR, 0.088; 95%CI, 0.013-0.612; p=0.014)とハプトグロビン(OR, 15.513; 95%CI, 1.455-165.363, p=0.023)であった。プラチナ系抗がん剤治療抵抗後のmUTUC患者に対するPPVにおけるペプチド特異CTL誘導のバイオマーカーは、BAFFとハプトグロビンであった。
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今後の研究の推進方策 |
これらの研究成果を論文化し、2017年開催される第105回日本泌尿器科学会学術集会、米国泌尿器科学会(Ameriacn Urological Association: AUA2017、第55回日本癌治療学会学術集会で発表予定である。 現在、論文化した成果を査読のある英文雑誌へ投稿中である。 今後は、更なる大規模な無作為比較臨床試験実施へ向けて、大きな研究費獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の臨床試験システムを利用して実施し臨床データを収集している。臨床試験にて収集した臨床データを用いて、各種サイトカインを測定し各種バイオマーカーを探索しており、年度をまたいでの研究となり、次年度への使用の必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究成果をまとめて、論文化し査読のある英文誌へ投稿予定している。また、これらの研究成果を、国内外の学会で発表予定している。
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