Androprostamine (APA)の作用機序解明のためにDNAマイクロアレイ(Affymetrix社製)を用いて、VCaPにAPAおよびビカルタミドを添加後24および48時間後の遺伝子発現変化の網羅的な解析を行った。得られたデータからARの制御下にある27種の遺伝子を抽出したところ、1 nMの合成アンドロゲン添加により発現上昇がみとめられ、1 μg/mlのビカルタミド添加によりそれらの遺伝子の発現上昇が抑制されることが確認できた。同様にAPA 0.5および1 μg/mlを添加して、ARの制御下にある遺伝子発現の変化を解析したところ、27の遺伝子のうち一部の遺伝子は発現が抑制されたが、大部分の遺伝子において合成アンドロゲンによる発現上昇は阻害されなかった。siRNAを用いたARのノックダウン実験よりAPAの抗腫瘍作用はARを介することは確認されているが、単純な転写抑制による作用ではなく、ビカルタミドとは異なる作用機序を有する事が明らかになった。 APAの合成展開においては、本年度はレゾルシノール部位の置換を試み14種類の新規化合物の合成に成功し、LNCaPおよびVCaPにおけるアンドロゲン依存性増殖に対する阻害作用と細胞毒性について解析を行った。その結果、残念ながらリード化合物を凌ぐ活性を有する化合物の合成は未達成であったことが明らかになった。しかしながら、構造活性相関の解析によりレゾルシノール部位のクロロ基および2つのヒドロキシル基は活性に重要であることが明らかになった。 APAは、マウスにおけるVCaPを用いた治療実験でビカルタミドより強い制癌効果を示したが、体重減少がみとめられた。そこで、体重減少の原因を突き止めるため、マウスを用いてAPA投与後の血清の生化学検査を行った。その結果、APA投与により腎障害が起きている可能性が示唆された。
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