研究課題/領域番号 |
15K10617
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
井上 高光 秋田大学, 医学部, 講師 (60375243)
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研究分担者 |
河谷 正仁 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00177700)
西島 和俊 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70435874)
齋藤 満 秋田大学, 医学部, 講師 (80400505)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎移植 / 萎縮膀胱 / 膀胱内圧測定 / 膀胱機能 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
腎移植臨床において、術前の長期透析患者では膀胱は廃用性に萎縮し、低コンプライアンス膀胱となっている。しかし腎移植後に膀胱に尿が流入すると膀胱機能は正常範囲へ比較的速やかに回復する。しかしこの現象における膀胱機能および構造の経時的変化およびその分子生物学的メカニズムについては全く研究されていない。この現象をウサギの萎縮膀胱回復モデルで再現し、経時的な回復過程を観察し、分子生物学的背景を探る。 予備実験1として、まずウサギ膀胱内圧測定を実施できた。ウサギ尿道にdouble lumen catheterを挿入し、膀胱を空にした後2mL/分の速度で膀胱内に温生食を注入した。膀胱内圧を持続的に測定し、リークポイントの膀胱内圧(cmH2O)と注入量(mL)を記録し、膀胱コンプライアンスを計算できた。 予備実験2として、「ウサギ膣尿路変向萎縮膀胱モデル」を作成できた。10~12週齢のメス日本白色種ウサギを8羽購入し、下腹部正中切開を置き、両側尿管を同定して結紮し、膣に開けた孔に尿管を差し込み、1針掛けて固定した。ウサギを6匹、1ヶ月安定して飼育できたので、膀胱内圧測定を全身麻酔下で行ったところ、萎縮膀胱を確認した。 予備実験3として、上記で作成し完成したウサギ萎縮膀胱モデルを再び麻酔し、膣に植えてある尿管を片方結紮切断して膀胱壁に植え直した。片側のみ膀胱に植えることで、ウサギの腎不全を回避することができる。この手術は膀胱が萎縮している為ある程度の困難があるが、現在までに1例のみ萎縮膀胱回復モデルを作成することが出来た。ウサギを全身麻酔下にsacrificeし、膀胱を採取してホルマリン処理検体、液体窒素下の凍結検体分け保存できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験としてまず「ウサギ膣尿路変向萎縮膀胱モデル」を作成できた。 膀胱内圧を持続的に測定し、リークポイントの膀胱内圧(cmH2O)と注入量(mL)を記録し、膀胱コンプライアンスを計算でき、萎縮膀胱を確認した。1例のみ萎縮膀胱回復モデルを作成することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
萎縮膀胱の自然史を記録するために、膀胱内圧測定を頻回に測定しようとしたが、開腹せずに膀胱カテーテルを挿入出来ないことがメスウサギの欠点である。これを解決するため、初回尿管膣吻合時に、ウサギ膀胱にカテーテルを2本留置し、いつでも膀胱内圧測定ができるようにした。膀胱尿路変向後から1週間毎に測定し、現在萎縮膀胱の進行の自然史を記録している。ウサギを15羽購入し、5羽ずつコントロール(Sham)群、萎縮膀胱群、萎縮膀胱回復群の3群に分ける。コントロール群は全身麻酔下で下腹部正中切開のみ行い傷を閉じる。萎縮膀胱群および萎縮膀胱回復群は全身麻酔下に下腹部正中切開の上、尿管を膣へ吻合する。予備実験で確認した時期に膀胱内圧測定を行い、萎縮膀胱を確認したら、萎縮膀胱回復群については尿管を膀胱へ再吻合する。回復を膀胱内圧測定で比較確認した後、全身麻酔下に検体を筋層と粘膜に分けて採取する。凍結しておいた代表的個体から採取した膀胱検体のTRIZOL処理を経て、アジレント社から発売されているmRNAマイクロアレイを行い、3群で遺伝子発現の比較を行う。発現量の変化が著しく、分子生物学的に機能との相関が報告され、有望と考えられる遺伝子について、RT-PCRで検証を行う。ウサギ遺伝子産物に対する抗体が入手可能であれば、3群でImmunoblottingで検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用したが、端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ウサギの購入費、飼育費、手術に際する消耗品の費用が支出の主となる。もし実験の進捗が早ければ、mRNA発現のマイクロアレイによる検索を行うが、これには約200万円の費用がかかる。
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