研究課題/領域番号 |
15K10618
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西松 寛明 東京大学, 医学部附属病院, 臨床登録医 (60251295)
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研究分担者 |
鈴木 越 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, その他 (40313134)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
動脈硬化巣に形成されるアテロームプラークの破綻は急性冠症候群の原因になるので、プラークの破綻を防ぐ手段を確立することは喫緊の課題である。破綻しやすいプラークの特徴としてプラーク被膜が薄くなることはよく知られているが、そこへ至る過程にプラーク内出血がプラーク不安定化に関与する事が知られている。前年度までに、ApoE欠損マウスの頸動脈を4週間結紮後に頸動脈周囲へポリエチレン製のカフを5日間まく方法を使用して高率に(約90%)プラーク内出血を起こすモデルを確立した。このモデルでinterleukin-1beta(IL-1beta)の発現が著明に(約30倍)増加し、IL-1betaの発現を抑制するsmall interfering RNA(siRNA)をカフの内側に投与するとプラーク内出血は有意に抑制された。これに並行して血管内皮細胞のマーカーとしてVE-cadherinを染色した所、予想外にIL-1beta siRNAを投与してプラーク内出血が抑制された群で有意にVE-cadherin陽性領域が多く、一方対照のsiRNAを投与してプラーク内出血が起きた群でVE-cadherin染色陽性部位は少なかった。この事はIL-1betaは正常な血管新生を抑制して未熟な血管形成を促進するためにプラーク内出血を促進する事が示唆された。今年度はその機序を明らかにするために血管内皮細胞培養細胞(VECs)を用いてin vitroでIL-1betaの効果を調べた。VECsをMtrigel上にまいて管腔構造を形成させるとIL-1betaは管腔構造形成を有意に抑制した。またVECsをまいた培養皿表面をチップで擦過して傷害を加え、その後のVECsの遊走能力を調べるとIL-1betaはVECsの遊走を有意に抑制した。IL-1betaは正常な血管新生を抑制してプラーク内出血を促進する事がin vitroでも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに1) 高頻度にプラーク内出血を起こすモデルを確立した。また2) atelocollagenを用いることにより効率よくsiRNA、microRNAを血管壁外側から投与できることを確認した。この方法は当初予定したペニス海綿体へのsiRNA、microRNAの投与に使用できると考えている。 今年度はMatrigelを用いたin vitroでの管腔構造形成モデル、細胞障害後の遊走能の評価などを用いてIL-1betaが正常な血管新生を抑制し、未熟な血管新生を促進する事を示した。 プラーク内の血管新生はプラーク内の脂質を血管外へ運び出して動脈硬化巣の進展を抑制するために有効であるが、正常な血管が形成されないと逆にプラーク内出血を起こすのではないかと推測される。次年度使用額が生じた理由と使用計画:理由共同研究者の臨床のdutyが多いのでペニスにsiRNA、microRNAを投与する実験が予定通り進行していない。 使用計画:上記の今後の研究推進方策に記載した内容の実験遂行に使用する。
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今後の研究の推進方策 |
IL-1betaが正常な血管新生を抑制する事が判明したので今後は以下のように研究を進める。 1) IL-1beta発現に対するDNAメチル化、histoneメチル化、アセチル化の効果 DNAメチル化、histoneメチル化、アセチル化は遺伝子の発現の調節に重要な役割を果たす事が明らかになってきている。さらにこれらの修飾は細胞にメモリを残す事が明らかになってきている。すわなちIL-1beta発現レベルを一過性に増減させるのでは無く、長期間にわたり発現レベルを維持する役割を持っている。今後IL-1beta発現を調節するepigeneticsに関しての研究を進めていく予定である。 2) IL-1betaの勃起能に関する効果の検討 IL-1beta は正常な血管新生を抑制するのでペニス海綿体の再生を抑制する事が推測される。この事を確認するために糖尿病モデルを用いてペニス海綿体でのIL-1beta発現の変化、内因性IL-1beta発現を抑制した時の勃起能の回復の有無などを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに1) 高頻度にプラーク内出血を起こすモデルを確立した。また2) atelocollagenを用いることにより効率よくsiRNA、microRNAを血管壁外側から投与できることを確認した。この方法は当初予定したペニス海綿体へのsiRNA、microRNAの投与に使用できると考えている。 今年度はMatrigelを用いたin vitroでの管腔構造形成モデル、細胞障害後の遊走能の評価などを用いてIL-1betaが正常な血管新生を抑制し、未熟な血管新生を促進する事を示した。 プラーク内の血管新生はプラーク内の脂質を血管外へ運び出して動脈硬化巣の進展を抑制するために有効であるが、正常な血管が形成されないと逆にプラーク内出血を起こすのではないかと推測される。共同研究者の臨床のdutyが多いのでペニスにsiRNA、microRNAを投与する実験が予定通り進行していない。使用計画:上記の今後の研究推進方策に記載した内容の実験遂行に使用する。
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