研究実績の概要 |
われわれは、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞を移植することによって機能的な膀胱が再生することを報告してきた (Imamura, et al. Cell Transplantation 2008, Tissue Engineering 2009, 2012, 2015)。骨髄由来細胞の移植方法としては、膀胱組織への直接注入移植や温度応答性培養皿で作製した細胞シートのパッチ移植を行ってきた。しかし、これらの移植法には、克服しなければならないいくつかの課題があった。直接注入移植法では、移植細胞の活性化の低下、既に傷害を受けた膀胱組織に針を刺し注入することによる傷害部位の悪化と拡大の懸念がある。一方、細胞シートのパッチ移植では、シートを構成している細胞の膀胱構成細胞(平滑筋や神経細胞)への分化が認められず、また、薄いことから非常に脆弱であることが挙げられた。 そこで、本研究は、これらの課題を克服するとともに、実臨床への応用を視野に入れ細胞凝集体(スフェロイド)を用いた、より効率的かつ効果的な高機能細胞シート作製を試みた。当初は、温度応答性培養皿を利用したスフェロイドシート作製を計画していた。しかし、近年、スフェロイドを積層して立体構造体を作製するバイオ3Dプリンターが開発された。われわれは、そのバイオ3Dプリンターを利用して、骨髄由来細胞スフェロイドから積層型構造体の作製に成功した。 本年度までに、放射線照射によって障害を与えた膀胱に骨髄由来細胞積層型構造体を移植することによって、機能的な膀胱が再生することを示してきた。本年度は、これまでの追加実験として、積層型構造体移植によって放射線照射によって生じる膀胱線維化が抑制することを示した。そして、一連の研究成果を論文にまとめ、学術誌、Tissue Engineeringに投稿して、採択された。
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