研究実績の概要 |
ヒト外尿道括約筋細胞の分化能とTNF-αが与える影響についての検討 (方法) 予め同意を得た膀胱全摘患者より外尿道括約筋を初代培養し、ヒト筋不死化法(Shiomi et al.2011)に基づき cyclin D1, Cyclin dependent kinase3, teromeraseを遺伝子導入した長寿化したヒト外尿道括約筋細胞を作成した。①NCAMを一次抗体とするimmunostaingにて括約筋細胞であることの確認、②培養継続可能であるか、③分化能の有無、④TNF-α添加による分化能への影響を検討した。分子生物学的解析には筋分化のマーカーであるmyosin heavy chainを一次抗体とするwesternblotting, immunostaing, real time PCRを行った。また⑤TNF-α添加によるシグナル伝達の変化についてwesternblottingを行った。 (結果)①NCAM陽性細胞がほぼ100%であった。②長寿化ヒト外尿道括約筋細胞は倍加時間を維持したまま40代まで継代が可能であった。③分子生物学的解析では分化後は分化前と比較して有意にmyoshin heavy chainの発現が高くみられた。④分子生物学的解析ではTNF-αの濃度依存性にmyosin heavy chainの発現は低下した。⑤TNF-α添加下では、pAkt, pNF-κBの発現が有意に低下していた。 (まとめ) 加齢は慢性炎症を伴い、また高齢者において尿禁制が低下することが報告されている。今回、炎症性サイトカインの一つであるTNF-αを添加することによりヒト外尿道括約筋細胞の分化能が抑制され、その機序としてAktとNF-kBシグナル伝達経路が関与していることが示唆された。抗炎症治療により外尿道括約筋細胞の分化能低下を阻害できる可能性があり、高齢者尿失禁治療あるいは予防に有効である可能性がある。
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