研究課題/領域番号 |
15K10631
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高山 達也 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90324350)
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研究分担者 |
森田 辰男 自治医科大学, 医学部, 教授 (40200422)
中井 秀郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (50167540)
久保 太郎 自治医科大学, 医学部, 助教 (50508744)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 先天性水腎症 / ポリアミン |
研究実績の概要 |
水腎症の発症至適ポリアミン含有量の検討: Luciferase-Transgenic LEWラット(Luc-TgLEWラット)の雄8~10週齢を用いてポリアミン含有率を変化させた飼料を自由経口摂取の条件で与え、水腎症発症をポリアミン含有飼料摂食開始から6週間目に開腹し、目視で確認した。ポリアミン含有率0.1%群においてのみ典型的な水腎症が確認された。正常Luc-Tgラット(ポリアミン含有飼料0.01%)と比較してLuc-Tg LEWラットにおいては6匹中4匹で腎臓体積が約1.5倍程度に肥大しており、6匹中2匹で約1.2倍程度の肥大化が確認された。一方、野生型LEWラットでは6匹中1匹で1.1倍の腎臓肥大が確認された。以上より、Luciferase遺伝子をゲノムに組み込まれたLEWに高ポリアミンを摂食させると水腎症を発症する事から、ポリアミン応答性の遺伝子または関連遺伝子群の破綻が起こっている事が示唆された。 水腎症モデルラットの評価:水腎症を発症しているラットにポリアミン不含飼料に切り替えて、6週間自由摂取させた。実験は6匹のLuc-Tg LEWラットを用いて開始し、6週間後に目視で水腎症が大きい個体(1.5倍程度)を3匹選抜し、ポリアミン不含飼料で飼育管理した。選抜した3匹全例で水腎症(腎臓肥大)の軽減が確認された。3匹中1匹は野生型LEWラットと同等の大きさに、3匹中2匹においては1.1倍以下に戻っている事が判明した。以上より、ポリアミン応答性の遺伝子群が水腎症の発症に深く関与している事、および、小児先天性水腎症モデル動物として非常に有望である事が示唆された。 病態確認とサンプリング:水腎症を発症している事を目視で確認、その後、両側尿管を切断して尿を回収した。次に下大静脈より採血を行い、その後、腎臓を摘出し、2分割(病理用、検査用(DNA, RNA抽出およびメタボローム解析用))して採材した。採材したサンプルに関しては計画書に従って、平成28年度に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験が順調に進んだ事もあり、計画には含まれていなかった組織中および血中ポリアミン測定も検査項目に加える事が出来た。また水腎症モデル動物にポリアミンを摂取する事により、安定して疾患モデルが作製可能である事が確認された事により、今後の予定実験の遂行性(達成度)や新規実験の立案に繋がる事が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の4項目について検討をする。 平成27年度に採材した血液および腎臓を用いて以下の実験を行う。 ①血液および尿の生化学データの解析:BUN, Creの測定およびポリアミン含有飼料の濃度とBUN, Creの値との相関性などを明確にする。②病理標本の解析:腎臓検体の薄層切片を作製し、HE染色による腎組織の変化を病理学的に明らかにする。病理標本の観察結果によっては、マッソン染色やTUNEL染色などの免疫染色実験も追加し、病態モデルの評価(ヒトの疾患との比較)を行う。③腎組織からRNA、ゲノムDNAおよびmicroRNAを市販キットにて分離回収し、抽出物の品質等を電気泳動および吸光度計を用いて評価を行う。回収量が少ない場合、または品質が著しく低い場合には、水腎症ラットを作製し、採材を行う。④採材した検体に含まれているポリアミン濃度を計測し、経口摂取したポリアミンが水腎症の発症に寄与している事を明らかにする。⑤研究協力者に検体を送り、メタボローム解析を実施する。
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