研究課題
常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)は最も多い遺伝性腎疾患であり、本邦では患者数は約31,000人と推計され、3,000~7,000人に一人の頻度と報告されている。責任遺伝子としてPKD1とPKD2が知られているが、末期腎不全発症年齢中央値はPKD1 54歳、PKD2 74歳と、責任遺伝子がPKD1の方が腎機能低下が早い。さらに遺伝子型でもtruncating mutationの方がnon-truncating mutationよりも腎機能低下が早く、また責任遺伝子変異が同じ家系内であっても末期腎不全に至る年齢が異なる。したがってADPKDでは責任遺伝子以外に、modifier geneが腎機能低下などの病勢の進行に影響すると考えられている。現在ADPKDに対する唯一の根本的治療薬はバソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンであり腎容積増大速度および腎機能低下速度の有意な抑制が報告されているが、有効性を示す代理マーカーは知られていない。PKD1, PKD2以外にヒトや動物の腎嚢胞性疾患に関係する遺伝子は100以上知られている。われわれは日本のADPKD 100症例のDNAサンプルを用いて、これら114遺伝子について次世代シークエンサーを用いて、全エクソンシークエンスを行い、両側腎容積増大速度との関連を検討した。100人中60例(60 %)に114遺伝子中48遺伝子に病的変異を認めた。これらの遺伝子に変異が見られない群ではコントロール群とトルバプタン投与群の腎容積増大率の有意差は認められなかった(p = 0.1734)。しかし、遺伝子変異が見られた群ではトルバプタン投与群がコントロール群よりも有意に腎容積増大率が低かった(p = 0.0038)。そのため、腎嚢胞関連遺伝子の変異はトルバプタン有効性を見る代理マーカーと考えられた。
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