研究実績の概要 |
過活動膀胱(OAB)の機序として大きく、①膀胱平滑筋の不随意な収縮(排尿筋過活動)によるものと、②膀胱求心線維の興奮(知覚亢進)によるものがあり、後者の 成因として尿路上皮からのアセチルコリンの分泌亢進等が知られているものの、ヒトにおける詳細はまだほとんど明らかにされていない。今回我々は、知覚を他 覚的に評価する手法として、ニューロメーターと近赤外線分光法(NIRS)の両者を用いて、新規抗コリン薬であるフェゾテロジンの、膀胱求心線維(膀胱知覚)に対 する改善効果を明らかにすることを考えた。 Preliminary reportとして、下記を報告した。目的 OAB患者では蓄尿時の前頭葉排尿中枢不活化がみられることが知られている。一方、OAB治療薬の前頭葉排尿中枢不活化に対する影響はこれまで知られていない。我々は末梢性ムスカリン受容体遮断薬イミダフェナシンをもちいて検討した。対象と方法;神経疾患によりOABを有する62名に対して、イミダフェナシン0.2 mg/日を3か月間投与前後で、問診と認知機能検査を施行; このうち35名に対して、ウロダイナミクスを施行; このうち8名に対して、NIRSを施行した。結果;イミダフェナシン投与後、検査開始~初発尿意間の前頭前野血流が増大した。同時に、排尿症状問診表で夜間頻尿 (2.6→2.0, p<0.05), 尿意切迫感(毎日→週1回, p<0.05), 排尿QOL (困る→少し困る, p<0.05)が改善し、 ウロダイナミクスで初発尿意時膀胱容量(223 ml→266 ml, p<0.05)が増大し、認知機能に変化がみられなかった。結語;本検討の結果、イミダフェナシンは、認知機能を悪化させることなく、前頭葉排尿中枢を活性化することによりOABを改善する可能性が示さ れ、神経疾患によりOABを有する患者にとって良い選択の一つとなりえると思われた。
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