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2016 年度 実施状況報告書

無精子症に対する新規薬物療法確立のためのヒト精巣の網羅的遺伝子解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K10642
研究機関山口大学

研究代表者

白石 晃司  山口大学, 医学部附属病院, 講師 (00535255)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード無精子症 / 網羅的遺伝子解析
研究実績の概要

非閉塞性無精子症(non-obstructive azoospermia: NOA)は男性不妊診療および研究における最重要課題の一つである。実臨床においてはSertoli cell only、maturation arrestおよびhypospermaotgenssisに分類されることが多い。次世代シーケンサー(NGS)によるヒト精巣組織の網羅的遺伝子解析(RNA-seq)を行なっている。精子形成過程における遺伝子の発現と機能を解析することにより、それらに作用しうる薬剤や様々な因子を見出すことによりNOA症例に対する新規治療法の開発を目的とする。
ヒト精巣組織を用いたNGSによるRNA-seqにより新規ヒストンバリアントであるヒストンH3.5の存在を見出し、ヒト精巣内では主に精粗細胞および精母細胞に局在することが確認された。NOA患者においては有意にその発現が減少しており、maturation arrestにおいては何らかのepigenetics異常の存在も主な病態の1つではないかと考えられる。一方でearly MAにおいても活発に細胞分裂を行っているgerm cellは、Sertoli cellによる貪食を受けると言われている。NOA症例においてはSertoli cell特異的な遺伝子の発現低下も認めており、Sertoli cellの機能異常という観点からも造精機能障害の説明ができる可能性もある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒト精巣組織を用いたH3.5に関する研究において、免疫組織化学染色(IHC)、構造解析、NGSを用いたChIP-sequenceにより、H3.5は主に精粗細胞や精母細胞などの精子形成の早い段階で発現し、疎水結合が弱く、transcription start siteの手前に結合するなど一般的なヒストンとは異なるパターンで結合することが判明した (Urahama T et al. Epigenetics & Chromatin 2016)。さまざまなヒト精巣サンプルを用いたIHCにてH3.5の発現は精上皮依存性の発現を認め、下垂体ホルモン(ゴナドトロピン)による制御を受けていることが判明した(投稿中)。解析症例数も順調に増え、またNGSを用いたランスクリプトーム解析についても技術的な点については問題なく行われている。
造精機能が良好な精巣においてはcell cycle関連遺伝子の発現が高いことが判明し、精索静脈瘤症例におけるproliferating nuclear cell antigen (PCNA)を用いたIHCを行った。精索静脈瘤手術後に精液所見が改善する因子として精粗細胞におけるPCNAの発現がたかいことがその予測になることを報告した(Shiraishi K et al. Journal of Urology 2017)。
精細胞が存在しないといわれているSertoli cell onlyからのサンプルにおいても精原幹細胞の存在を示す遺伝子の発現があることが判明し、IHCにて精原幹細胞のマーカータンパクの局在を解析している。

今後の研究の推進方策

レーザーマイクロダイセクションを用い、精巣組織の限定された対象細胞のみの遺伝子解析も予定している。またSertoli cell only症において精原幹細胞の同定が行えれば、それらをisolationしsingle cell analysisによる機能解析を行う予定である。またisolationされた細胞の培養も考えている。

次年度使用額が生じた理由

網羅的遺伝子解析により研究対象とする候補分子の決定が早期になされたため、GSを用いたトランスクリプトーム解析は予定より少ない症例数で済んだため。

次年度使用額の使用計画

レーザーマイクロダイセクションやsingle cell analysisの準備に充てる予定であるが、これらは別のプロジェクトとして申請すべきであると考えている。また論文および学会発表の費用にも充てる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Predictive factors for sperm recovery after varicocelectomy in men with non-obsturctive azoospermia2017

    • 著者名/発表者名
      Koji Shiraishi, Shintaro Oka, Hideyasu Matsuyama
    • 雑誌名

      Journal of Urology

      巻: 197 ページ: 485-490

    • DOI

      10.1016/j.juro.2016.08.085

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Gonadotoropin actions on spermatogenesis and hormonal therapies for spermatogenic disorders2017

    • 著者名/発表者名
      Koji Shiraishi, Hideyasu Matsuyama
    • 雑誌名

      Endocrine JOurnal

      巻: 64 ページ: 123-131

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ17-0001

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Effects of human chorionic gonadotoropin on testicular interstitial tissues in men with non-obstructive azoospermia.2017

    • 著者名/発表者名
      Oka S, Shiraishi K, Matsuyama H.
    • 雑誌名

      Andrology

      巻: 5 ページ: 232-239

    • DOI

      10.1111/andr.12292

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Histone H3.5 forms an unstable nucleosome and accumulates around transcription start sites in human testis.2016

    • 著者名/発表者名
      Takashi Urahama, Akihito Harada, Kazumitsu Maehara, Naoki Horikoshi, Koichi Sato, Yuko Sato, Koji Shiraishi, Norihiro Sugino, Akihisa Osakabe, Hiroaki Tachiwana, Wataru Kagawa, Hiroshi Kimura, Yasuyuki Ohkawa, Hitoshi Kurumizaka.
    • 雑誌名

      Epigenetics & Chromatin

      巻: 9 ページ: 2

    • DOI

      10.1186/s13072-016-0051-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 非閉塞性無精子症診療の進歩と課題2016

    • 著者名/発表者名
      白石晃司、松山豪泰
    • 学会等名
      第68回西日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      山口県下関市(海峡メッセ下関)
    • 年月日
      2016-11-25 – 2016-11-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 男性不妊症とヒト精巣組織を用いた網羅的遺伝子解析2016

    • 著者名/発表者名
      白石晃司、岡 真太郎、日高幸浩、松山豪泰
    • 学会等名
      日本アンドロロジー学会第35回学術大会
    • 発表場所
      群馬県前橋市(前橋テルサ)
    • 年月日
      2016-06-24 – 2016-06-25
  • [学会発表] Transcriptome analysis of testicular tissues in men with non-obstructive azoospermia with varicocele and predictive factors of sperm recovery after varicocelectomy2016

    • 著者名/発表者名
      Koji Shiraishi, Shintaro Oka, Hideyasu Matsuyama
    • 学会等名
      American Urological Association 2016
    • 発表場所
      San Diego (USA)
    • 年月日
      2016-05-08 – 2016-05-12
    • 国際学会
  • [学会発表] 精索静脈瘤を伴う非閉塞性無精子症のトランスクリプトーム解析と静脈瘤術後の精子回収予測2016

    • 著者名/発表者名
      白石晃司、岡 真太郎、松山豪泰
    • 学会等名
      第104回日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      宮城県仙台市(仙台国際センター)
    • 年月日
      2016-04-25 – 2016-04-26
  • [図書] HSF is required for gametogenesis2016

    • 著者名/発表者名
      Koji Shiraishi
    • 総ページ数
      301(147~164)
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2018-01-16  

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