非侵襲的新規バイオマーカーである血清学的IgA活動性(糖鎖異常IgA1、これに特異的なIgA、糖鎖異常IgA1を含む免疫複合体)によって腎移植後再発性IgA腎症の発症・活動性・予後を予測することを目的とし、前向き観察研究を行った。 香川大学単施設前向き研究よる連続27例の生体腎移植レシピエントとそのドナーを対象とした。原疾患はIgA腎症に限らず全疾患を対象とし、移植腎生検にてIgA沈着を認めた10例のレシピエントと提供腎にIgA沈着を認めた8例のドナーを対象とし、沈着を認めない症例を比較対照とした前向き観察研究を行った。1年、3年のプロトコール移植腎生検とエピソード生検にて認められるIgA沈着をアウトカムとし、血清学的IgA活動性による検出力検定を行った。 移植後3年以内のIgA沈着は37%の症例で認められた。また、IgA沈着群では移植腎機能が低値で推移する傾向にあった。すべてプロトコール生検での検出で、検尿異常はほとんどない症例であった。病理学的にほぼ同一のIgA沈着症という組織像においてドナー、レシピエント間に血清学的IgA活動性の差はなく、多くの症例で健常人の90パーセンタイルを下回っていた。1年時のプロトコール生検でIgA沈着を認めた7例中、3年時の生検にて消失を認めた症例は3例であったが、これら消失群では1年時の糖鎖異常IgA1を含む免疫複合体濃度が低い傾向にあった。これらのことから、腎移植後早期の無症候性IgA沈着症レシピエントと沈着症ドナー間の血清学的IgA活動性に大きな差はなく、1年時の糖鎖異常IgA1を含む免疫複合体濃度が腎移植後IgA沈着症の予後を推定する可能性が示唆された。一方で腎移植後IgA沈着症においても沈着したIgAは糖鎖異常IgA1であることが証明された。
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