研究課題/領域番号 |
15K10647
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 堅太郎 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 講師 (20404345)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アンドロゲン / アンドロゲンレセプター / 尿道下裂 |
研究実績の概要 |
外生殖器は、アンドロゲンにより顕著な形態的性差(雄化)を有する器官である。近年、この雄化プロセスの異常が一因とされるヒト先天性疾患“尿道下裂”の発症率が増加しているが、その発症メカニズムはおろかアンドロゲンによる雄化の分子メカニズムもほとんどわかっていない。私は、マウス外生殖器形成過程おいて雄特異的に発現する遺伝子としてMafBを見出した。興味深いことに、雄のMafBノックアウトマウス(MafB KOマウス)は、尿道下裂に類似した尿道形成異常を呈することから、MafBは、尿道の形成に不可欠な因子であることがわかった。MafBの発現領域は、アンドロゲンの特異的なレセプターであるアンドロゲンレセプター(AR)と類似している。興味深いことにARノックアウトマウスの解析およびアンドロゲン曝露実験により、MafBの発現はアンドロゲン依存性である可能性が示唆された。 本研究は、MafB KOマウスの解析および次世代シーケンサーによる組織ChIP-Seq解析を駆使し、アンドロゲンによる外生殖器雄化の分子メカニズム、さらに、アンドロゲンシグナルの破綻が導く尿道下裂の発症メカニズムを統合的に理解することを目的としている。 MafBの発現制御領域にアンドロゲン応答配列が複数存在していたことから、アンドロゲンはMafBの発現を直接制御している可能性が考えられた。そこで、これらのAREが実際にアンドロゲンに応答するかを検証するためその領域を単離し、レポーター assayにより検証した。その結果、MafBの発現制御領域に存在するアンドロゲン応答配列を介して直接MafBの発現を制御している可能性が見えてきた。また、次年度より開始する組織を用いたChIPアッセイおよび次世代シーケンサーによるChIP-seqを行うため、外生殖器原基を用いたChIPの最適条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レポーター assayといったin vitro assay系による検証により、アンドロゲンレセプター(AR)は、MafBの発現制御領域に存在するアンドロゲン応答配列を介して直接Mafbの発現を制御している可能性を見出すことができた。さらに、組織を用いたChIPアッセイおよび次世代シーケンサーによるChIP-seqを行うためのDNAの断片化条件、固定法、ライブラリ-作成法など外生殖器原基を用いたChIPの最適条件を検討し、最適条件を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果からin vitro assay系では、MafBはアンドロゲンシグナルの直接的な下流因子である可能性が示唆されたが、今後、実際にin vivoにおいても今回同定したアンドロゲン応答配列が機能しているかを遺伝子改変マウスを作成し検討する。 MafBの性差発現がエピジェネティックに制御されている可能性を調べるため各種ヒストン抗体およびAR抗体を用いて、次世代シーケンサーを実施し、MafB発現領域におけるヒストン修飾の状態を雌雄で異なるのかを比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、遺伝子改変マウス作成のためのベクターを作成する予定であったが、アンドロゲン応答領域の同定に時間を要してしまい作成までにいたらなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子改変マウス作成のためのベクターを作成するための分子生物学試薬を購入する予定である。MafBの性差発現がエピジェネティックに制御されている可能性を調べるため実施予定の次世代シーケンサーを用いたchIP-seqに必要な試薬、ライブラリー作成試薬、各種ヒストン抗体およびAR抗体等を購入する予定である。
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