研究課題/領域番号 |
15K10650
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西本 紘嗣郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00365363)
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研究分担者 |
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30445407)
沖 健司 広島大学, 大学病院, その他 (30638995)
向井 邦晃 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80229913)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルドステロン / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
我々は、アルドステロン(ALDO)合成酵素(CYP11B2)を検出する免疫染色に成功し、成人正常副腎皮質にCYP11B2を強発現するALDO産生細胞塊(APCC)を同定した (JCEM 2010;95,2296-305)。さらに最近我々は、APCCからの微量DNAの解析により、ALDO産生腺腫(APA)に報告されたイオンチャネル・ポンプ遺伝子の体細胞変異(APA関連変異)がAPCCにも存在することを報告した(PNAS 2015;112,E4591-9)。以上は、APCCがAPAの発生母地であるという我々の仮説を支持する。しかしAPCCからAPAへの移行を示唆する病変(possible APCC to APA transitional lesion: pAATL)は報告されていなかった。そこで、本課題ではpAATLを検出してそれらにおけるAPA関連変異の局在を明らかにすることを目的とした。原発性ALDO症(PA)の診断で副腎摘除術を行ったが、病理学的にAPAが検出されなかった十数例の副腎からpAATLを探索し、検出されたpAATLからAPA関連変異解析を行った。その結果、2例の副腎にCYP11B2陽性多発結節を認めた。これらは被膜直下がAPCC様でありその内奥部は微小APA様であったことからpAATLと推定した。6個のpAATLからAPA関連変異解析を行い3個のpAATLにAPA関連変異を認めた。2個の変異陽性pAATLではAPA様部位のみに変異を認めたが、それらのAPCC様部位には認めなかった。この結果は、APA関連変異がAPA形成に関与する可能性を示す。残りの変異陽性pAATLではAPCC様部位とAPA様部位に共通する変異を認めた。これは、APCC様部位とAPA様部位が単一細胞由来であることを示す。pAATLにおけるAPA関連変異の局在は、同変異がAPCCからのAPA発生に関与する可能性を示唆する。本研究成果はJCEM 2016;101,6-9に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、2点の目的 (目的1と2) を提案した。目的1の研究は、「研究実績の概要」に記載したように、ほとんど達成することができた。現在、目的2の研究を遂行するために準備中である。以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
目的2の研究では、「ラット副腎においてAPA関連変異はAPCCを形成する」ことを検証する。レンチウイルスを用いてAPA関連変異遺伝子をラット副腎に強制発現させる予定である。申請者は、共同研究者である広島大学の沖博士と共同でレンチウイルスを作製し、すでに同ウイルスが副腎皮質癌細胞株であるHAC15細胞において機能することを確認している。今後は、ラット副腎に同レンチウイルスを局注し、解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、経費削減に務めたために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
目的2の研究では、レンチウイルスの作製およびラットの購入や飼育に予定より高額の資金が必要になる予定である。平成27年度の残額はその研究資金に充てる。
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