研究課題
申請者らは、アルドステロン合成酵素 (CYP11B2) をコルチゾールの合成酵素 (CYP11B1) と区別して特異的に検出する免疫染色に世界で初めて成功し、成人の副腎皮質にはアルドステロン産生細胞クラスター (APCC) が検出されることを報告した (J Clin Endocrinol Metab 2010;95,2296-305)。平成27年度には、APCCにはアルドステロン産生腺腫 (APA) に報告されたイオンチャネル・ポンプ遺伝子の体細胞変異 (APA関連遺伝子変異) が検出されること (PNAS 2015;112,E4591-9)、およびAPCCからAPAへの移行を示唆する病変が存在すること (pAATL; J Clin Endocrinol Metab 2016;101,6-9) の報告を行った。これらは「APCCがAPAの発生母地である」という我々の仮説を支持する (研究提案の目的1)。平成28年度は、主なAPA関連変異であるKCNJ5遺伝子体細胞変異が胎生期の中胚葉細胞に発生し、変異のない細胞と遺伝子モザイクを形成して両側副腎過形成や腺腫となったと推定される珍しい症例の報告を行った (Mol Cell Endocrinol 2017;441,134-39)。この症例は、「APA関連変異が腫瘍発生に関与すること」を間接的に示唆する (目的2)。他に、アルドステロン産生副腎皮質癌におけるステロイド合成酵素局在の検討の研究成果 (Endocr Pathol 2017;28,27-35) 、APCCが加齢とともに増加・増大することの研究成果 (Int J Endocrinol 2016;7834356)、およびCYP11B2染色の総説 (Mol Cell Endocrinol 2017;441,124-133) を報告した。
2: おおむね順調に進展している
目的 1の研究に関しては概ね順調に進展している。目的 2の研究に関しては、研究施設が埼玉医科大学国際医療センターに移動し、ラットを使用できる環境に無いために遅れている。しかし、ラットを使用しない他のアプローチから目的 2の研究を遂行できると考え研究を進めている。
「研究実績の概要」に記載した、KCNJ5変異が胎生期に発生した症例は、KCNJ5変異が副腎皮質の過形成や腫瘍化に関与することを示唆する。今後、同様の症例を複数例詳細に分子生物学的に検討することにより、そのメカニズムの解明を試みる予定である。
所属施設の異動に伴い、ラットを用いた研究が困難となり、目的 2に使用する予定であった資金の残余が生じた。
目的 2の研究をすすめる代替案として、KCNJ5の遺伝子変異モザイク症例や胚細胞変異症例の組織や血液を用いて、全エクソンシーケンスやRNAシーケンスによる解析を行う予定である。残余の資金はこれらの研究に使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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