研究実績の概要 |
われわれは、アルドステロン(aldo)合成酵素(CYP11B2)の免疫染色法に成功し多様なaldo産生病変を描出した。結果ヒト成人副腎皮質の被膜下には、aldo産生細胞クラスター (APCCと新規命名)が多発することが判明した (J Clin Endocrinol Metab 2010;95,2296-305)。2011年以降aldo自律産生に関与するイオンチャネル・ポンプ遺伝子の体細胞変異がaldo産生腺腫(APA)に報告された。APCCにはこれらと同一の変異が検出されることを報告した(PNAS 2015;112,E4591)。以上より、「APCCは原発性aldo症の病変である」、「APCCはAPAの発生母地である」との仮説を持つに至った。本研究課題では「体細胞変異に着目したAPCCの病変進展メカニズムの解明」を研究課題として、2つの目的を設定した。目的 1は「APA関連変異は、APCCの被膜下部位ではなく、内奥部位に存在する」の証明であった。本研究に関しては、平成27-29年度において数多くのヒト組織の解析を行い、APCCからAPAへの移行を示唆する病変(pAATL)を報告した。以上より目的1の研究はおおむね達成することができた。平成30年度は目的 2「ラット副腎皮質においてAPA関連変異はAPCCを形成する」の証明を試みた。しかし、ラットの副腎はヒトのそれと解剖や分子基盤が大きく異なるためか、期待する成果、すなわちラットにおけるAPCCの人工的な形成は行えなかった。しかし、その目的達成の一端として、ラットとヒトの副腎におけるステロイドの局在をMALDIイメージングで描出することに成功した (Hypertension 2018;72,1345-54)。現在われわれは、ステロイドの局在と遺伝子発現との関連性を観察することにより、APCC発生の分子基盤の解明を試みている。
|