研究実績の概要 |
1. miRNA網羅的解析用検体の選定:まずは精巣生検組織を病理学的に見直し、厳密に定義できるsertoli cell only (SCO, Johnsen score: 2.0), maturation arrest (MA, Johnsenscore 4-6), obstructive azoospermia (OA, Johnsen score: 8以上)、ならびに正常検体として妊孕能を有する男性(Fertile men, FE)のうち特に造精機能のパラメーターが高い個体を選択し、それらの精漿をライブラリから選出した。 2. 精漿からのtotal RNA抽出法の検討:精漿は蛋白濃度や粘性が高く、通常の方法だけでは純度が非常に低いtotal RNAしか抽出できなかったため、精漿からの最適な抽出法を検討した。その結果、まずはグアニジンチオシアネート溶液(Trizol)を用いて抽出、イソプロパノール沈殿の後、スピンカラム(miRNeasy Plasma kit, Qiagen) にて精製する方法が最も純度の高いRNAを抽出することができた。200uLの精漿から抽出したtotal RNAの収量は407ng~1306ngで260/280比は1.37-1.55であった。 3. miRNAマイクロアレイ解析:RNAの純度が高かった検体からFE 3例、SCO 2例、MA 2例、OA 1例を解析用検体としてDNAチップ研究所に委託してAgilent SurePrint G3 Human miRNA microarray (miRBase21) を用いてアレイ解析を行った。RNA integrity numberは1.7-2.8と非常に低かったがmiRNAの解析には問題がないと考え、各検体スタート量small RNA 10ngにて解析した。クラスタリング解析では各群の階層が明確に分かれる傾向は見られなかったが、主成分分析より第三主成分まで含めると累積寄与率が70%を超えることから、これらの主成分によりデータの発現傾向が説明出来た。FEと比較して発現上昇していたmiRNAの数はSCO:178, MA:94, OA:238、発現が低下していたmiRNAはSCO:27, MA:170, OA:12であった。
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