研究実績の概要 |
造精機能障害の患者と健常者の間で、精漿中のmiRNAの発現プロファイルを比較し、造精機能障害で特異的に発現が変化するmiRNAを見出し、造精機能障害の病因予測や病態把握あるいは精子形成の研究に役立つバイオマーカーとしての可能性を検討するため以下の検討を行った。 1)精漿からのtotal RNA抽出法の検討:精漿は蛋白濃度や粘性が高く、通常の方法だけでは純度が非常に低いtotal RNAしか抽出できなかったため、精漿からの最適な抽出法を検討した。その結果、まずはグアニジンチオシアネート溶液を用いて抽出、イソプロパノール沈殿の後、スピンカラムにて精製する方法が最も純度の高いRNAを抽出することができた。 2)miRNAマイクロアレイ解析:精巣生検組織を病理学的に見直し、厳密に定義できるsertoli cell only (SCO, Johnsen score: 2.0) 2例、maturation arrest (MA, Johnsenscore 4-6) 2例、, obstructive azoospermia (OA, Johnsen score: 8以上) 1例、ならびに正常検体として妊孕能を有する男性(Fertile men, FE)のうち特に造精機能のパラメーターが高い個体3例についてAgilent SurePrint G3 Human miRNA microarrayを用いてアレイ解析を行った。 3)マイクロアレイ解析結果の検討:各症例群で発現が有意に変動しているmiRNAを抽出したところ、FEと比較して発現が上昇していたmiRNAの数はSCO:178, MA:94, OA:238、発現が低下していたmiRNAはSCO:27, MA:170, OA:12であった。 4)造精機能評価パネルの作製と精漿中microRNAの定量解析:FE 3検体に対し、SCO,MAともに発現亢進している6個(miR-200a-5p, 370-3p, 605-5p, 1307-5p, 3170, 3934-5p)、発現低下2個(miR-891a-5p、miR-1229-3p)からなる造精機能障害の評価パネルを作成した。精漿におけるこれらマイクロRNAの発現量をリアルタイムPCRにて定量し、結果を解析中である。
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