平成29年度は、27-8年度から引き続き二次性副甲状腺亢進症モデルラットの上皮小体よりクローニングした遺伝子:KANSL1-L(KAT8Regulatory NSL Complex Subunit 1)遺伝子をKO(Knock out)したマウスを用いて、そのKOマウスの精巣が優位に小さく、その精巣組織においてはB型精母細胞から一次精母細胞は確認されるが、それ以降精子の分化を全く認めることができなかった病態の変化を分子生物学的、病理学的手法を用いて、精子形成に及ぼすKANSL1-L遺伝子の働きの検索を行った。病理学的には4週齢後以降より明らかに野生型マウスの組織と異なり、野生型では見られる減数分裂によってつくられた配偶子、すなわち精子細胞(spermatid)やその後精子形成をへて成熟した小さくとがった精子は全く認められず、A型精母細胞、それから有糸分裂をおこない精子を産生するように運命づけられたB型精粗細胞を認めることはできたが、それ以降の精子細胞の分化の過程を示す細胞は全く認められなかった。すなわちB型精母細胞から成熟した精子を作製する分化機能は最初の段階から全く機能していないということが組織学的に考えられた。分子生物学的検査よりKANSL-1KOマウスの精巣組織において精子形成の分化はB型精粗細胞の分裂過程のパキテン期後期からディアキネシス期で止まっていると考えらた。またKOマウスの精巣においては精子形成が進行しない原因としてB型精母細胞のアポトーシスが亢進しており精子の成熟に関与していると考えられたのでtunel染色、DNAラダー等の方法を用いて検索をおこない、KOマウスの精巣に於いて精母細胞のアポトーシスの亢進を認めた。
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