研究課題/領域番号 |
15K10654
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
矢澤 隆志 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00334813)
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研究分担者 |
谷口 隆信 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60217130)
加藤 剛志 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60194833)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顆粒膜細胞 / SF-1 / DNAマイクロアレイ |
研究実績の概要 |
本研究は、卵巣顆粒膜細胞の分化誘導系を確立し、それを用いて細胞分化の分子メカニズムを解明することを目的とする。そこで、前年度は、幹細胞から顆粒膜細胞の分化誘導系と共に顆粒膜細胞前駆細胞から分化した顆粒膜細胞を誘導する系の確立を試みた。そして、ヒト顆粒膜細胞腫由来で比較的未分化状態の細胞株であるKGN細胞に、アデノウイルスやレトロウイルスを用いて転写因子Steroidogenic factor-1 (SF-1/Ad4BP)遺伝子の導入を行った。すると、SF-1/Ad4BPを導入したKGN細胞では、CYP19A1やAMHといった顆粒膜細胞のマーカー遺伝子の発現が誘導された。また、培地液中のステロイドホルモンを測定したところ、エストラジオールの産生が検出された。よって、未分化な顆粒膜細胞は、SF-1/Ad4BP遺伝子を発現させることにより女性ホルモン(エストラジオール)産生能を有する状態に分化することが分かった。この分化の分子メカニズムを解明するために、分化前後に発現が変化する遺伝子の網羅的な探索を行った。そこで、GFP遺伝子とSF-1/Ad4BP遺伝子を導入したKGN細胞から、それぞれ抽出したmRNAを用いることにより、DNAマイクロアレイを行った。すると、ステロイドホルモン産生酵素を含む機知のSF-1/Ad4BPの標的遺伝子に加えて、転写因子や成長因子、サイトカインを含む非常に多くの遺伝子が分化前後に発現が大きく変動することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト顆粒膜細胞の新たな分化誘導モデルを作製し、これを用いて分化メカニズムの解析を行い、分化に重要な候補遺伝子や顆粒膜細胞の新たな機能に関わることが期待される多くの遺伝子を同定したことから、研究は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度にKGN細胞の分化系を用いたDNAマイクロアレイで分化前後に発現の変化が認められた遺伝子が、顆粒膜細胞分化や顆粒膜細胞の機能において果たす役割を調べる。そこで、候補遺伝子をアデノウイルスやプラスミドによる過剰発現やsiRNAによるノックダウンを行い、顆粒膜細胞のマーカー遺伝子の発現やステロイドホルモンの産生量を測定する。効果が認められた遺伝子については、ヒト卵巣や顆粒膜細胞の検体を用いて、in vivoにおける発現や機能の詳細を調べる。さらに、幹細胞や他の未分化細胞から、新たな顆粒膜細胞を分化誘導する系を新たに確立する。新たな分化系が確立された場合、DNAマイクロアレイや次世代シーケンサーを用いることにより、顆粒膜細胞の分化や機能に関わる遺伝子を、さらに探索し、機能解析を行う。
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