研究課題
前年度までに構築化したKGN細胞に転写因子SF-1/Ad4BPを導入し、cAMP処理することにより成熟顆粒膜細胞を分化誘導する系を用いて、CYP19A1遺伝子の転写メカニズムに関する研究を行った。CYP19A1は、KGN細胞において低レベルでしか発現していないものの分化により強力に発現が誘導される。この機構を調べるために、CYP19A1遺伝子の5’上流域を含んだルシフェラーゼベクターを用いたレポーターアッセイを行ったところ、CYP19A1遺伝子のプロモーター活性には、これまで同定されている転写開始点-130bp付近に存在するSF-1/Ad4BP結合サイトに加えて、-250bp付近と-200bp付近に存在する計3ヶ所の転写因子結合配列が重要であることが分かった。さらに、分化前には、これらの領域への転写活性化因子の結合は、転写抑制因子が結合することにより阻害されていることも明らかになった。よって、CYP19A1遺伝子は、分化前後に、プロモーター領域中に結合する転写因子が入れ替わることにより、転写が調節されていることが明らかとなった。さらに、顆粒膜細胞は、LH刺激によって黄体化することに伴いCYP19A1の発現は低下するが、この時は、再びプロモーター領域に結合していた転写活性化因子が外れて、転写抑制因子が結合する可能性も強く示唆された。また、CYP19A1に加えて、DNAマイクロアレイにより同定された分化に伴い発現が誘導される遺伝子群についても、転写メカニズムの解析を行い新たにSF-1/Ad4BPの標的遺伝子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
KGN細胞において、新たに構築した顆粒膜細胞の分化系を用いて、CYP19A1(アロマターゼ)遺伝子の転写制御メカニズムの詳細を明らかにすることができた。CYP19A1は、エストロゲン産生に関わる顆粒膜細胞の機能や分化に必須な遺伝子であることから、研究は比較的順調に進展していると言える。
引き続き、DNAマイクロアレイにより同定された分化に伴い発現が誘導される遺伝子群について、ルシフェラーゼベクターを用いたレポーターアッセイにより転写メカニズムの解析を行うと共に、これらの遺伝子群をsiRNAによりノックダウンして、顆粒膜細胞分化における役割を調べる。さらに、新たな顆粒膜細胞分化誘導系を構築するために、様々な間葉系幹細胞にSF-1/Ad4BPや他の遺伝子の導入を行う。エストロゲンの産生やマーカー遺伝子の発現により、顆粒膜細胞様に分化することが分かった細胞については、DNAマイクロアレイを行い分化に重要な候補遺伝子群を新たに同定する。
最終年度は、これまでの成果の多くを論文にするので、その投稿料や掲載料が必要となることから一部繰越しをすることにした。
論文掲載料(一部) 53,295円
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
J Clin Endocrinol Metab
巻: 101 ページ: 3582-91
10.1210/jc.2016-2311
Endocr J
巻: 63 ページ: 943-951
10.1507/endocrj.EJ16-0373