研究課題
今年度は、これまでに確立した未分化顆粒膜細胞から分化した顆粒膜細胞を誘導する系、さらには分化した顆粒膜細胞から黄体化顆粒膜細胞を誘導する系を利用して顆粒膜細胞の分化メカニズムを調べる実験を行った。未分化な顆粒細胞、分化した顆粒膜細胞、黄体化顆粒膜細胞モデル由来の細胞を用いたDNAマイクロアレイにより遺伝子の発現変化を網羅的に調べたところ、一酸化窒素合成酵素のうち誘導型の酵素であるiNOSは、分化モデル系において、顆粒膜細胞への分化後に発現レベルが低下することが分かった。一方、内皮性の一酸化窒素合成酵素であるeNOSは、顆粒膜細胞が黄体化するにあたって上昇することが分かった。この一酸化窒素合成酵素の発現は、顆粒膜細胞の重要な分化マーカーであり、エストロゲン産生に必要不可欠なCYP19A1の発現と対照的なパターンであった。そこで、ラットの卵巣におけるiNOSの発現を調べたところ、未分化な顆粒膜細胞に発現が高いものの、CYP19A1が発現する時期になると発現が著しく低下していた。初代培養の未分化な顆粒膜細胞は、FSHによってCYP19A1の発現が上昇するが、iNOSは反対にFSHにより発現が低下した。さらに、一酸化窒素の生成剤を未分化な初代培養の顆粒膜細胞に添加したところFSHによるCYP19A1の発現上昇は、強く抑制された。以上の結果より、iNOSは一酸化窒素の産生を介してCYP19A1の発現を抑制し、顆粒膜細胞の分化を抑制していることが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
Scientific Reports
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