絨毛羊膜炎( CAM)は早産原因の3分の2を占める疾患である。CAMを発症すると、子宮頚管や羊水中で種々の炎症性サイトカインが誘導され早産に至る。現状では子宮局所の炎症を早期かつ非侵襲的に捉えることは困難であり、早産徴候出現後では治療しても早産を抑制できないことが多い。早産発症経過は、1 細菌性腟症発症、2 その上行性波及によりCAM 発症し、大腸菌菌体毒素のリポ多糖が免疫細胞刺激、3 炎症誘導型サイトカインTNF-α、IL―1β産生、4 IL―1βはサイトカインIL-6産生を促進し炎症反応拡大、5 IL―1βはIL-8の産生も促進し、好中球が子宮頸管局所に遊走し、頸管熟化、卵膜の脆弱化、6 IL―1β、TNF-αはCOX-2 を増加させ、局所でProstaglandin 産生促進され、子宮収縮発生、7 陣痛発来、子宮頸管熟化、破水、 炎症反応拡大し早産へとつながると考えられている。 一方、PTX3 は炎症により産生される蛋白質であり、CRPと同じPentraxin super family に属する。LPS やインターロイキン1β、TNF-αなど炎症シグナルに反応して血管内皮細胞などから産生されるため、IL-6 刺激で肝臓で産生されるCRPより鋭敏に局所炎症を反映すると考えられ、炎症性疾患の重症度判定や治療予後予測での有用性が期待されている。 本研究はPTX3 によりCAM に依存した早産を早期診断できるかを明らかにすることを目的とした。 最終年度は切迫早産群20症例における妊娠初期、中期、後期でのPTX3を測定した。その結果、切迫早産群の平均分娩週数は33.0±4.9週であり対照群38.5±1.2週と比較して有意に早産例が多かった。切迫早産群の妊娠初期のPTX3値は2.7±1.0ng/mL、中期 2.8±1.6ng/mL、後期4.6±3.8ng/mLで2ndから3rdでの上昇が顕著であった。しかし対照群との数値には有意差は認められなかった。以上から、PTX3のみによるCAM依存性の早産予知は困難という結果だった。今後、子宮頸管長との関連などさらなる解析を進めていく。
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