研究課題/領域番号 |
15K10657
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡江 寛明 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10582695)
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研究分担者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80253532)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲノムインプリンティング / 胎盤 / 次世代シーケンサー / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
ゲノムインプリンティング(GI)は、胎盤を保有する哺乳類に共通な現象で、胎盤形成にその生物学的重要性が指摘されている。本研究の目的は、ヒト胎盤におけるインプリント遺伝子を網羅的に探索するとともに、その制御機構を明らかにすることである。前年度までに、初期胎盤より細胞性栄養膜細胞を単離し、エキソーム、RNA-seqおよびWGBS解析を行った。 平成28年度は、前年度までに得られた解析結果を基に、インプリント遺伝子の網羅的探索を行った。まずRNA-seqおよびエキソーム解析より、全発現遺伝子のうち約75%(計9007遺伝子)について、アレル特異的な発現データを取得した。これら9007遺伝子より、父方アレルもしくは母方アレル特異的に発現するものを79遺伝子同定した。79遺伝子のうち35遺伝子は既知インプリント遺伝子であり、44の新規インプリント遺伝子を同定することに成功した。続いてWGBSデータを用い、アレル特異的DNAメチル化解析を行った。その結果、母方アレル特異的にメチル化を受ける領域を484同定した。このうち44領域が既知DMR(Differentially methylated region)、残り440領域が新規DMRであった。一方、父方アレル特異的にメチル化を受ける領域はH19-DMRのみであった。 遺伝子発現データとメチロームデータを統合することで、44の新規インプリント遺伝子のうち少なくとも27遺伝子について、近傍にDMRが存在することを確認した。よって、これら27遺伝子のアレル特異的発現は、DMRによって制御されている可能性が高い。興味深いことに、本研究で同定した新規インプリント遺伝子の大部分は、マウスおよびラバの胎盤では保存されていなかった。よって、胎盤におけるインプリンティング制御は、哺乳類間で極めて多様であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ヒト胎盤特異的インプリント遺伝子およびインプリント制御領域の網羅的探索を完了し、44の新規インプリント遺伝子と440の新規DMRを同定した。得られた成果を論文化するとともに(Am J Hum Genet, 2016)、エキソーム解析、RNA-seq解析、WGBS解析によって得られた配列データを国立遺伝学研究所DDBJ Sequence Read Archiveに登録・公開した(ID: JGAS00000000038)。以上のように、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、申請者らが樹立したヒト栄養膜幹(TS)細胞株を用い、ヒト胎盤特異的インプリント遺伝子の解析を進める。具体的には、次世代シーケンサーを用いたアレル特異的発現およびメチル化解析を行い、ヒト胎盤におけるインプリント状態がin vitroで忠実に再現されるか否かを検討する。
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