研究課題
本研究の目的は、ヒト胎盤におけるインプリント遺伝子を網羅的に探索するとともに、その制御機構を明らかにすることである。前年度までに、ヒト胎盤における網羅的な遺伝子発現およびDNAメチル化解析を行い、44の新規インプリント遺伝子および440の新規アレル特異的メチル化領域(DMR)を同定することに成功した。最終年度は、申請者らが樹立に成功したヒト栄養膜幹(TS)細胞を用い、胎盤特異的インプリント遺伝子の解析を進めた。まず、一ヵ月以上培養を行ったTS細胞よりゲノムDNAを抽出し、全ゲノムバイサルファイトシーケンス解析を行った。次に、既知の胎盤特異的インプリント遺伝子のうち、近傍にDMRを持つ33遺伝子に着目してDNAメチル化状態を解析した。その結果、70-80%の遺伝子が中程度のメチル化状態を維持していることを見出した。さらに、このうち10遺伝子については、アレルを区別するために必要な一塩基多型が存在し、9遺伝子がアレル特異的なDNAメチル化状態を維持していることを確認した。以上より、ヒトTS細胞において胎盤特異的なインプリント制御機構が概ね維持されていることを明らかにした。ヒト胎盤で同定されたインプリント遺伝子の大部分は、マウスの胎盤ではインプリンティングを受けていないため、動物モデルを用いて解析することは困難である。ヒトTS細胞は、ヒト胎盤におけるインプリント遺伝子の発現制御機構や機能を解析するうえで有用なモデルとなると期待される。
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Cell Stem Cell
巻: 22 ページ: 50~63.e6
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