研究実績の概要 |
FIRSの主因である絨毛膜羊膜炎の大部分は上行性感染により生じるため、炎症が脱落膜、絨毛膜、羊膜へと進展するに伴い臨床的にもより重篤となることが知られている。このため、本年度は、まず、絨毛膜由来細胞と羊膜細胞でactivin Aを構成するinhibin/activin-βA subunit(INHBA)およびactivinの働きを負に制御するinhibin-α subunit (INHA)、follistatin (FST)、follistatin like-3 (FSTL3)のmRNAの基礎発現量を比較した。この結果、羊膜細胞と絨毛膜由来細胞におけるINHA, FST, FSTL3 mRNAの発現量の差は数倍であるのに対してINHBA mRNAの発現量は羊膜上皮細胞、羊膜間葉系細胞ともに絨毛膜由来細胞に比べ数百倍高値であることが明らかとなり、この結果は、絨毛膜に比べ羊膜ではactivin A産生が優位であるとするこれまでの報告を支持するものであった。次に昨年度に継続し、炎症性サイトカインIL-1β刺激による羊膜細胞におけるINHBA, INHA, FST, FSTL3 mRNA発現量の変化をTNF-α刺激と比較した。0.1 ng/mlのIL-1βは羊膜上皮細胞におけるINHBA mRNA発現を有為に増加させ、その作用は10 ng/mlのTNF-αと同程度であった。更に、羊膜上皮細胞でNF-αはFST mRNA発現を促進するのに対して、IL-1β(0.1-10 ng/ml)は用量依存的にINHA mRNAとFST mRNAの発現を抑制した。羊膜は無血管性の組織であり、羊膜上皮細胞は羊水と直接接している。今回の研究により、絨毛膜羊膜炎の羊水中に検出される濃度のIL-1βが羊膜上皮細胞のINHBA mRNA発現を促進するのに対して、負の制御因子に対しては抑制的に作用することが明らかとなり、IL-1β刺激はTNF-α刺激以上に、羊膜上皮細胞と羊水におけるactivin A優位な状態を生じさせることが推測された。
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