われわれは、自然周期による採卵の効率を上げるため、主席卵胞以外の小卵胞に注目し、研究を進めてきた。実際卵胞径3-10mmの小卵胞を使っての採卵で、妊娠に至った症例は今年度だけで、7組存在している。その小卵胞を使っての妊娠の予後に関しては、別の研究テーマで精査されている。本研究では卵胞液、顆粒膜細胞、卵丘細胞等のcharacterizeを行うことにより、その実用性を証明しようとしている。 卵胞液のprofileでは小卵胞はプロゲステロンが優位に低く、テストステロンが優位に高い状態であった。プロゲステロンの優位な低下は、主席卵胞の顆粒膜の黄体化によるところが大きいと思われ、それが卵胞の質を安定化しているわけではない。そこで、テストステロンの卵胞における役割を検証した。マウス卵巣より卵丘細胞卵複合体(COC)を取り出し、培養するex-vivoの系を確立した。培養液中のテストステロン濃度を上げると、卵細胞が卵丘細胞塊から脱出する、denudeという現象が多くみられるようになり、またテストステロン合成阻害薬、アビラテロン処理をすると、denude減少が抑制された。さらにアロマターゼノックアウトマウスでの卵胞培養では卵細胞周囲の顆粒膜の減少が認められ、また、COC作成が困難であった。以上よりアンドロゲン高値での環境は卵丘細胞の質を悪化させる可能性があることが示唆された。アンドロゲン高値の影響は排卵にもみられ、ex-vivoでの卵胞培養においては排卵障害も示し、これはアビラテロンによりrescueされた。以上より小卵胞の利用効率を上げるためには、アンドロゲンが多くなる前の採卵が良く、主席卵胞の採卵時期である、LH注射後36時間より前の採卵が良いと考えられ、また、LH注射をせずに採卵することも可能であることを示唆している。
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