研究課題/領域番号 |
15K10662
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
米田 哲 富山大学, 大学病院, 講師 (30345590)
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研究分担者 |
齋藤 滋 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (30175351)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 切迫早産 / 抗菌薬 / 羊水中病原微生物 |
研究実績の概要 |
妊娠32週未満の未破水切迫早産で、入院後羊水検査の同意を得た104例を対象とした。羊水中病原微生物は、33.6%(35例)に認められ、細菌とUreaplasma/Mycoplasmaの重複感染16.3%、細菌のみの感染12.5%、Ureaplasma/Mycoplasmaのみの感染4.8%の比率であった。細菌感染に対しセフェム系抗菌薬、Ureaplasma/Mycoplasma感染に対しマクロライド系抗菌薬、感染がない場合には抗菌薬投与なしという条件を適切な抗菌薬使用と定義し検討すると、適切な抗菌薬治療群(n=67)では、有意な妊娠期間の延長効果があり、多変量解析結果においても適切な抗菌薬治療は妊娠期間の延長に対し有意な治療(P=0.0009)であることがわかった。 これらをさらに羊水中病原微生物陽性群(n=35)、陰性群(n=69)に分けて同様に検討すると、陽性群においては適切な抗菌薬を投与した場合、妊娠期間が有意に延長し(P=0.0080)、一方、陰性群では抗菌薬を投与した場合にかえって妊娠期間が短縮していることがわかった(P=0.0308)。これらの結果は未破水切迫早産患者において、羊水中の病原微生物を正確に評価し、適切な抗菌薬治療を行うことが新生児予後の改善につながる可能性があることを意味し、報告した(Am J Reprod Immunol.75;440-450:2016)。 ただし、羊水中の病原微生物が細菌であれば抗菌薬の効果が得られやすいが、Ureaplasma/Mycoplasmaである場合には効果が乏しい可能性も推測され、今後症例数を増加し検討する予定である。 また、羊水中病原微生物陰性例の切迫早産例では、黄体ホルモンによる妊娠期間延長効果が得られる可能性を考慮し検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未破水切迫早産に対する抗菌薬治療は、現時点では母体感染症には有効とされるが、新生児にはかえって予後不良(新生児死亡、発達障害)であるとされているが(Cochrane Database.2013)、羊水中病原微生物を正確に評価しているわけではない。今回の我々の検討では、羊水中病原微生物を正確に評価した結果であり、世界で初めて未破水切迫早産に対する抗菌薬が有効である可能性につき論じることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本邦においては、諸外国と事情が違い臨床症状が軽いうちから入院管理・治療(long-term tocolysis)が可能である。抗菌薬治療は、臨床症状が重度になってからでは治療に対する反応が得られがたい可能性が高いと推測しており、症例を追加し、治療効果が得られやすい時期につき検討予定である。 また、Ureaplasma/Mycoplasma感染に対する抗菌薬治療抵抗性の理由(強い子宮内炎症を惹起する。抗菌薬自体に耐性である。など)につき今後は症例数を増加し検討していく予定である。
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