研究実績の概要 |
妊娠32週未満の未破水切迫早産例では、羊水を採取し(当院倫理委員会承認済み、患者の同意を得た場合のみ施行)、当院で開発した迅速・高感度PCR法を用いて羊水中病原微生物を正確に同定後、陽性例では最適と思われる抗菌薬を1週間点滴投与し、陰性例には抗菌薬を投与しない場合、妊娠期間が約4週間延長できることを報告した(Yoneda S,et al.Am J Reprod Immunol.75:440-50;2016)。このような子宮内の病原微生物を正確に評価し、切迫早産に対して抗菌薬を使い分ける治療方法は世界で初めてである。 これらを含め、第11回日本早産学会(2017.10.14.東京で開催)にて、『未破水切迫早産に対する羊水検査の意義について-分娩時期の予測、子宮内の炎症と感染、腸内細菌との関連性-』と題して、ワークショップにて口演した。 また、子宮内の病原微生物と関連があるとされる唯一の超音波所見として、sludgeが報告されている(Romero R,et al.Ultrasound Obstet gynecol.30:793-8;2007)。我々の高感度PCR法を用いて検討すると、sludgeのある群における羊水中病原微生物検出率は31.6%であり、sludgeのない群の38.4%と比較し有意な差は認められなかった。一方、sludgeのある群の羊水中IL-8値は、15.2(0.2-381.5)ng/mLであり、sludgeのない群の値 5.8(0.1-413.7)ng/mLに比し有意に高値(p=0.005)であった(Yoneda N,Yoneda S,et al.Am J Reprod Immunol.79:e12807;2018)。この結果から、sludgeの有無により抗菌薬投与を決定することは望ましくないと考えられた。
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