研究課題/領域番号 |
15K10663
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
折坂 誠 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (80324143)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 精子 / 卵子 / ミトコンドリア品質管理 / Mieap |
研究実績の概要 |
細胞質内のミトコンドリアには品質管理システムが存在しており、ミトコンドリアの健常性と機能を維持するために重要な役割を担っている。本研究では「ミトコンドリア品質管理は生殖細胞の機能維持に重要な役割を担っており、加齢などの影響でミトコンドリア品質管理システムが破綻すると卵子や精子の質が低下する」と仮説し、その検証を試みている。具体的には、癌抑制遺伝子p53誘導性のタンパクである Mitochondria-eating protein(Mieap)が、不良なミトコンドリアを貪食・除去することで細胞質内のミトコンドリアの健常性を維持していることに注目し、生殖細胞におけるミトコンドリア品質管理システムの役割と、その破綻が及ぼす悪影響を、Mieapノックアウトマウス(Mieap KOマウス)の継続交配実験と体外受精実験により検討している。 継続交配実験において、若年マウスではMieap KOによる生殖能への影響を認めなかった。一方中高年マウスでは、♂WT(正常型マウス)×♀KOの出産ペースが途中から停滞し、総産仔数も♂WT×♀WTより有意に少なかった。また、♂KO×♀KOでは出産ペースがより早期から停滞し、総産仔数は♂WT×♀WTや♂WT×♀WTより有意に少なかった。これらの事実は、加齢に伴いMieap KOマウスの精子・卵子で不良ミトコンドリアが蓄積することで妊孕能が低下する可能性を示唆する。 体外受精において、中高年♀WTマウスと若年♀WTマウスの卵子を比較した場合、中高年♂WTマウスや♂KOマウスの精子を用いて体外受精すると、中高年♀WTマウスで受精率や胚盤胞発生率が有意に低下した。この事実は、加齢による卵子の質低下に伴い、精子が持ち込む不良ミトコンドリアを、卵子がうまく処理(品質管理)し切れなくなる可能性を推測させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの結果より、精子や卵子にもミトコンドリア品質管理システムが存在しており、それぞれの機能において重要な役割を担う可能性が強く示唆された。また、加齢が精子や卵子のミトコンドリア品質管理システムに及ぼす影響も少しずつ明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの継続交配および体外受精を用いた一連の研究を通じて、精子や卵子におけるミトコンドリア品質管理が、様々な生殖現象において重要な役割を担っていることが、in vivoおよびin vitro的に明らかになってきた。今後はその細胞内メカニズムについて、特に酸化ストレスの観点から詳細に検討する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
胚の免疫染色に関する実験プロトコールの確立に時間がかかり、本実験が次年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
胚における酸化ストレスを免疫染色で観察する際の、試薬購入に充てる計画である。
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