研究課題
出生後の細胞移植治療を効果的に行うため、免疫システム確立前の胎児に、特定の細胞を暴露させることで、それらに対する免疫寛容を効率的かつ安全に誘導する方法を開発することを目的とする。先天性表皮水疱症を治療対象モデルとする。細胞の暴露方法としては、ヒト胎児期に行われる侵襲的臨床手技のうち、もっとも早期に行われる絨毛検査の手技を応用する。また、移植する細胞は、骨髄細胞、間葉系幹細胞、血液幹細胞を用いてそれぞれの誘導する免疫寛容を比較する。本課題では、平成27年度は、下記の2つを主たる目標とした。①絨毛内細胞移植により、移植細胞に対して、あるいはその細胞が産生する蛋白に対して、免疫寛容を誘導するかどうかを調べること、②骨髄細胞移植と、骨髄由来の血液幹細胞あるいは間葉系幹細胞単独移植によって誘導される免疫寛容の質的違いを検討すること。①に関しては、特定の蛋白を発現する細胞の中でも、特に幹細胞の移植によってのみ、免疫寛容が誘導されることが示された。幹細胞を含まない分化した細胞からは、免疫寛容を誘導することはできなかった。また、異型細胞を用いた実験によって、異型細胞に対する免疫寛容の誘導も可能であることが示された。②に関しては、間葉系幹細胞のみに発現する蛋白に対する免疫寛容の誘導は、間葉系幹細胞移植では獲得されたが、同蛋白を発現しない血液幹細胞からは免疫寛容は誘導されないことが示され、たとえ同種細胞であっても、幹細胞の種類によって、誘導される免疫寛容に差異があることが示された。
2: おおむね順調に進展している
達成できた点、①絨毛内幹細胞移植によって、特定蛋白に対する免疫寛容が誘導されることが示せた。②絨毛内幹細胞移植によって、異型細胞に対して免疫寛容が誘導されることが示せた。③幹細胞の違いによって、誘導される免疫寛容に差異があることを示すことができた。それによって、特定の蛋白に対する免疫寛容を誘導する為には、適切な種類の幹細胞を選択して、移植する必要性のあることが示された。遅れている点:特になし
平成26年度の研究進捗状況を踏まえ、①異型細胞による免疫寛容誘導の結果、②異なる幹細胞による、異なる免疫寛容の結果をまとめて報告すること。また、③iPS細胞をある程度分化させ、同方法を用いて移植することで、免疫寛容を誘導し、出生後に同iPS細胞由来の実質組織を移植し、生着することが可能かどうかを確認すること。④母体胎児間マイクロキメリズムと現象のみで、胎児が母体由来細胞に対する免疫寛容誘導が可能かどうかについて確認すること。等の研究も追加して行う予定にする。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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