研究実績の概要 |
先行研究は(Izawa et al., 2008, 2011, 2012, 2013, 2014)、子宮内膜症に特徴的なゲノムDNAメチル化修飾と遺伝子発現との関連を示唆している。私共は、その検証を目的に網羅的DNAメチル化解析を試み、93遺伝子上に1,811箇所の子宮内膜症細胞に特徴的なDNAメチル化修飾を同定した。本研究計画では、先行研究の成果を子宮内膜症の診断分子マーカーとして応用展開することを目標に、以下の2点に焦点を絞り研究を実施した。先行研究で同定したGATA6遺伝子の脱メチル化修飾の遺伝子発現との関連についてヒストン修飾を手掛かりに解析した。GATA6遺伝子を除く、92遺伝子の子宮内膜症細胞における発現を検討した。 1)GATA6遺伝子の脱メチル化修飾領域のシス活性の検証を試みた。ヒストン修飾抗体を用いたChIP解析により、エンハンサー機能が示唆された。さらに、子宮内膜症細胞では活性型エンハンサー機能が示唆された。子宮内膜細胞で観察されるこの配列のメチル化は、エンハンサー活性を抑制していることが示唆された。これらの観察は、子宮内膜症細胞におけるDNAメチル化修飾と遺伝子発現の関連を示唆する (Izawa et al. 投稿中-1)。 2)検証した92遺伝子の2遺伝子で同様のエンハンサー領域の存在が示唆された(Izawa et al. 投稿中-2)。 今回得られた成績は、エンハンサー領域のメチル化修飾を標的とする探索方法が、「子宮内膜症の異常なDNAメチル化修飾を伴う疾患特異的な遺伝子発現」を診断分子マーカーとして絞り込む新規のストラテジーとなることを示唆する。
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