研究課題/領域番号 |
15K10674
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北島 道夫 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (50380845)
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研究分担者 |
カーン カレク 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60336162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵巣チョコレート嚢胞 / 卵巣予備能 / 卵胞発育 / 炎症 |
研究実績の概要 |
卵巣チョコレート嚢胞を有し,インフォームドコンセントが得られた例において薬物療法を併用した2期的手術を行った.コントロールとして1期的手術の症例でも腹水等の臨床検体を採取した.手術を受けた症例では,術後に超音波検査や血中AMH値の測定を行い卵巣予備能に手術操作や薬物療法が与える影響を検討した.本年度は卵巣組織中の初期卵胞と周囲間質において,顆粒膜細胞や間質細胞の活性化の状態と関連すると考えられるsteroidgenic factor 1 (SF-1)の発現動態に着目して検討を行った.また,薬物療法前後での腹腔内での炎症促進因子ならびに酸化ストレス関連因子の変化について検討する目的に,腹水中のIL-6あるいはTNFα濃度を測定して比較した. 卵巣チョコレート嚢胞に対する手術後に血中AMH値はほとんどの例で一旦下降したのち,術後3-6ヶ月後に再上昇した.なかには術前値よりも高値を示す例も存在した.その後術後12ヶ月目ごろまでに再度ゆるやかに下降を示す例が多かった.これらは,初期発育卵胞より主に産生されるAMHが,手術侵襲による発育卵胞の閉鎖・消失によって一旦下降し,そのAMHの低下によって原始卵胞のリクルートメントの亢進が促されるためAMHが再上昇するものと考えられた.一方,卵巣中で周期的に選択される原始卵胞のコホート数が手術後に再構成されたのち,卵巣予備能が保たれている例ではもとのAMH値に近い値に戻り安定することが示唆された. SF-1は顆粒膜細胞と卵細胞に局在が認められ,現在その発現動態に影響を与える因子を解析中である. 腹水中のIL-6濃度はプロゲスチンにより低下したが,2回目の手術時の骨盤腔内の癒着の程度との関連は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は手術症例からの検体収集に努めたが,体液あるいは組織検体を得るためのインフォームドコンセントの取得が困難で.取得した検体数が目標に達していない. 免疫組織化学的手法による卵胞周囲の間質における発現物質の評価において,必ずしも一定の結果が得られていない. 得られた卵巣組織が少ないため,十分な卵巣組織由来のRNAが得られず,安定したRT-qPCRの結果が得られていない.
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今後の研究の推進方策 |
腹腔鏡手術を施行する子宮内膜症症例において,末梢血,腹水,腹膜,卵巣組織の収集に努め,検体数の増加を図る.比較的採取が容易でインフォームドコンセントが取得しやすい腹水での炎症性サイトカインあるいは酸化ストレス関連物質の変化の検討を優先して行っていく.また,組織での検証は組織アーカイブでの検討を行うことができる免疫組織化学的検討を優先して行う. 研究計画に沿って,マウスモデルの作出・検討を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した検体数が予想を下回り,本研究で使用する組織処理用薬品,各腫1次抗体,ELISAキットあるいはガラス・プラスチック消耗品等の使用量が当初の予想を下回ったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では,マルチプレックスELISAによる蛋白発現の検討を予定しており,本年度は検体数が充足することが予想されるため,次年度使用額をマルチプレックスELISAに要する費用に充てる予定である. また,本研究で次年度に引き続き行う予定の実験において使用予定の各腫1次抗体,PCR用キット,マウス購入・飼育費,各腫消耗品に充てる予定である.
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