研究課題/領域番号 |
15K10676
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 敦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (50432977)
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研究分担者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 産婦人科 / 前置胎盤 / 癒着胎盤 / microRNA / 母体血漿 / C19MC / 胎盤特異的 / 分子マーカー |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画のとおり、以下の成果を得ることができた。1.検体集積:同意を得て、前置胎盤は7例(うち癒着胎盤で子宮を摘出した症例は1例)の母体血漿を集積保存した。2.胎盤特異的microRNAの同定と前置胎盤との関連:chromosome 19 microRNA cluster region (C19MC)に存在するmicroRNAが胎盤特異的であることを確認した。3. TaqManプローブの作成および条件設定:C19MC領域の胎盤特異的microRNAとして、母体血漿中mir-517aおよびmir-518b流入量のreal-time RT-PCRによる絶対定量法を確立した。4.胎盤特異的microRNAと前置胎盤との関連: 前置胎盤20例(前置胎盤群)および正常妊娠26例(コントロール群)を対象とした。母体血漿は陣痛発来前の妊娠32週に採取した。両群間における母体血漿中胎盤特異的microRNA流入量を比較検討した。前置胎盤群における母体血漿中mir-517a流入量はコントロール群におけるそれと比較し、有意に高値であった(p=0.011, Mann-Whitney U test)。一方、前置胎盤群における母体血漿中mir-518b流入量はコントロール群におけるそれと比較して、有意に低値であった(p=0.004, Mann-Whitney U test)。 以上より、C19MC領域のmicroRNAが胎盤特異的であることが確認された。そして、妊娠32週における母体血漿中C19MC領域のmicroRNA(mir-517aおよびmir-518b)流入量は前置胎盤の分子病態を推定するマーカーである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の当初の研究計画の通り、C19MC領域のmicroRNAが胎盤特異的に発現することを確認し、それらの母体血漿中における定量法を確立することができた。そして、母体血漿中に流入する胎盤特異的microRNAと前置胎盤との関連について検討し、分子病態を推定するマーカーになりうる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の研究を推進する。 胎盤特異的cell-free mRNA/miRNAの臨床的意義を評価する。2. 癒着胎盤のスクリーニングに有用な分子マーカーセットを選別する。3. 胎盤特異的cell-free mRNA/miRNAマーカーセットの癒着胎盤への応用の可能性を前方視的に探る。3-1.妊娠初期の分子診断; 2.で決定した分子マーカーセットを用いて癒着胎盤のリスクをスクリーニングする。3-2.妊娠末期の画像診断;穿通胎盤あるいは嵌入胎盤の可能性を評価する。3-3.術中(帝王切開)の評価;術中超音波により脱落膜の有無を確認する。3-4.術後の病理診断;子宮摘出群では病理組織検査を行い癒着胎盤の有無を診断する。子宮温存群では胎盤の病理診断により子宮筋層の有無を確認して癒着胎盤の有無を確認する。但し、本研究の結果は研究期間を通じて治療方針へは反映させない。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は胎盤特異的microRNAを同定し、その定量法を確立した。そして、平成28年度に計画していた前置胎盤との関連について検討し、その臨床的意義に関する知見を得た。一方、胎盤特異的mRNAに関するに必要なcDNAマイクロアレイ解析を実施しなかったので、cDNAマイクロアレイ解析に必要な試薬および消耗品を購入しなかったので、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画全体では、研究計画は順調に推進されており、平成28年度に分子マーカーセットを決定する際には、cDNAマイクロアレイ解析を行うので、請求された助成金は研究期間内に使用される。
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