研究課題/領域番号 |
15K10677
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
三浦 生子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00404301)
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研究分担者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 陣痛発来 / mRNA / microRNA / 分子マーカー / 母体血漿 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、羊水穿刺の前後における母体血漿中のcell-freeならびにexosome由来の妊娠関連マイクロRNA濃度を測定し、母体血漿中における両者の関係を明らかにした。羊水染色体検査を受けた妊婦16例を対象とし、検査前後の末梢血を採取した。リアルタイムRT-PCR法を用いて、母体血漿中のcell-freeならびにexosome由来の妊娠関連マイクロRNA濃度 (miR-515-3p, -517a, -517c, -518b, and 323-3p) が測定された。検査前後における妊娠関連マイクロRNA濃度の推移ならびにcell-free由来とexosome由来の妊娠関連マイクロRNAの関連について検討された。羊水穿刺前後における母体血漿中の妊娠関連マイクロRNA濃度の推移について、cell-free miR-518b濃度は有意に低下していたが (Wilcoxon signed rank test, P = 0.001)、exsome由来のそれは有意に変化していなかった(Wilcoxon signed rank test, P = 0.001)。その他のcell-freeならびにexosome由来の妊娠関連マイクロRNA濃度は、羊水穿刺前後で有意な変化は認められなかった(P > 0.05)。母体血漿中のcell-free miR-518b濃度は羊水穿刺により低下していたが、exosome由来のmiR-518b濃度は変化していなかった。したがって、子宮内環境への刺激にするmiR-518bの生体内での役割はcell-free由来とexosome由来とで異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、母体血漿中における19番染色体上のmicroRNA領域に存在するmicroRNA(C19MC)流入量と陣痛の有無との関連が示唆された。平成28年度は、羊水穿刺による子宮への刺激に対するC19MC領域のmicroRNAの生体内での推移を明らかにすることを目標とした。その結果、羊水穿刺による子宮刺激に対して、C19MC領域のmiR-518b流入量の変化がcell-free由来とexosome由来とで異なることを明らかにしたので、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究目標は、陣痛と関連するエピゲノム変化の同定である。平成28年度までに陣痛や子宮収縮と関連する分子マーカーとして、C19MC領域のmicroRNAを同定し、それらは胎盤組織において父親アレルから発現していることが報告されている。また、C14MC領域のmicroRNAは母親アレルから発現していることが報告されている。そこで、平成29年度は、母体血漿中における親アレル特異的microRNAプロファイルを決定し、陣痛との関連、子宮収縮抑制あるいは誘発分娩における薬剤反応性との関連について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、18トリソミーのある胎児を妊娠している妊婦13例および正常核型の胎児を妊娠している妊婦24例を対象として、羊水穿刺前後の母体血漿中胎盤徳的microRNA流入量の推移を検討した。研究目標である子宮刺激に対する胎盤特異的microRNAの推移を明らかにすることができたが、解析に用いるサンプル数が少なかった。また、切迫早産と関連する胎盤特異的microRNAを同定し、子宮収縮抑制剤に対する反応と関連するmicroRNAを同定する予定であったが、臨床データの蓄積に時間を要したため、次年度に解析することになった。したがって、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は集積されたサンプルを用いて、切迫早産と関連する胎盤特異的microRNAを同定し、子宮収縮抑制剤に対する反応と関連するmicroRNAを同定する予定である。したがって、研究期間中に、研究費は適切に使用される。
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