研究課題/領域番号 |
15K10679
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
楢原 久司 大分大学, 医学部, 教授 (60211447)
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研究分担者 |
平川 東望子 大分大学, 医学部, 助教 (20516132)
奈須 家栄 大分大学, 医学部, 教授 (30274757)
河野 康志 大分大学, 医学部, 准教授 (40274758)
甲斐 健太郎 大分大学, 医学部, 客員研究員 (90457622)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 子宮内膜症 / STAT3 / VEGF |
研究実績の概要 |
MicroRNA(miRNA)は約22塩基のnon-cording RNAで、mRNAに結合してmRNAの分解やタンパク質の翻訳を調節することにより、エピジェネティクス機構の1つとして働く。近年、子宮内膜症病変におけるmiRNAの発現異常が報告されているが、その詳細は不明である。我々は、子宮内膜症の病態形成におけるmiRNAの役割について解明するため、子宮内膜症病変において発現異常が認められるmiRNAの同定と、病態形成における意義について検討した。 卵巣子宮内膜症性嚢胞および子宮筋腫の手術時に、文書による同意を得て子宮内膜症病変および正常子宮内膜を採取し、子宮内膜症間質細胞および正常子宮内膜間質細胞を分離・培養した。それぞれの細胞よりRNAを抽出し、miRNA microarrayによる網羅的解析を行なったところ、子宮内膜症間質細胞において発現が減少しているmiRNA群として、miR-196b、miR-199a-3p、miR-199b-5p、miR-214、miR-29b、miR-335*、miR-424、miR-455-3p、miR-503、miR-542-3pが、子宮内膜症間質細胞で発現が増強しているmiRNA群として、miR-100、miR-132、miR-181a、miR-210、miR-362-5p、miR-370、miR-513bが抽出された。 さらに、子宮内膜症間質細胞で発現が増強しているmiR-210の役割について検討した。正常子宮内膜間質細胞にmiR-210を強制発現させ、gene expression microarrayおよびIngenuity Pathway Analysisを用いて、miR-210によって発現調節を受ける標的遺伝子群の網羅的解析を行ったところ、signal transducer and activator of transcription (STAT) 3を介して、vascular endothelial growth factor (VEGF)をはじめとする因子を制御するsignal pathwayが抽出された。miR-210の強制発現により、正常子宮内膜間質細胞の細胞増殖は促進、アポトーシスは抑制、VEGF産生は促進された。また、STAT3阻害剤は子宮内膜症間質細胞の細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導、VEGF産生を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、miR-210の標的因子群について検討した。その結果、miR-210はsignal transducer and activator of transcription (STAT) 3を介して、vascular endothelial growth factor (VEGF)をはじめとする因子を制御することが推測された。 miR-210の強制発現により、正常子宮内膜間質細胞の細胞増殖は促進、アポトーシスは抑制、VEGF産生は促進された。また、STAT3阻害剤は子宮内膜症間質細胞の細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導、VEGF産生を抑制した。 以上のように、当初の計画通りに検討を行い、成果を上げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討結果を基に、STAT3阻害剤を用いて、動物実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より、旅費が若干安くなったため、2,000円の残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
残金は翌年度の物品費の一部として使用する予定である。
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