研究課題/領域番号 |
15K10680
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80326149)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 着床前診断 / 胚盤胞 / 胚盤胞腔液 / WGA / MDA / array CGH |
研究実績の概要 |
染色体均衡型転座に起因する反復流産患者対する着床前診断で異常の結果のため移植の対象とならず凍結保存されていた胚を、融解し胚盤胞まで培養した後、胚盤胞腔液(BCF)をマイクロマニピュレータを用いて採取した。BCF採取はすべての胚盤胞で障害を与えることなく完遂できた。 得られたBCF内のcell free DNA (cfDNA) をMDAの技術を用いて増幅した。その結果、グレードの低い胚盤胞由来のBCF内cfDNAでは増幅がえられなかったが、良好胚盤胞由来のものでは75%で十分な増幅が得られた。良好胚盤胞由来のBCF内cfDNAの増幅率は既報告と同等であった。 増幅されたDNAを用いて行ったarray CGHでは、全染色体における十分な評価に値する結果は得られなかった。しかし、BCFを採取した胚盤胞の栄養外胚葉から生検した5-8細胞を用いたarray CGHでは、80%以上の検体で全染色体の数的異常に関する情報が得られた。着床前診断の対象となっていた転座部分における解析結果は以前に行ったFISHの結果と一致していた。 BCF内cfDNAから増幅したDNAを用いておこなった筋強直性ジストロフィーのトリプレットリピート領域のfragment解析では、評価可能な結果が得られ、CTGリピート数の診断も可能であった。 BCF内にわずかに存在するcfDNAを網羅的に均等に増幅するのは困難であり、それがarray CGHで十分な結果が得られない原因と考えられた。しかし、cDNAが網羅的、均等でなくても、少量でも存在すれば単一遺伝子疾患の診断は可能であることが明かとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BCF採取、WGA、array CGH、筋強直性ジストロフィーのトリプレットリピート領域に対する解析とも問題なく遂行できている。28年度以降も予定通り遅滞なく研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
BCF採取技術の改善を行う。BCF採取方法は今年度の方法でも問題はないと考えられるが、胚盤胞腔液生存性を向上させるため、より細い穿刺針を用いてBCF採取を行う。 BCF内cfDNAの増幅方法、増幅条件の調整による増幅効率の改善をめざす。BCF内にわずかに存在するcfDNAを網羅的に均等に増幅するのは困難であり、それがarray CGHで十分な結果が得られない原因と考えられるため、増幅方法についてMDA以外の方法も検討を行う。 BCF内cfDNAでのarray CGH解析率の改善を目指す。array CGHにより全染色体の数的構成の診断率が向上するよう、array CGHの解析条件等の調整を行う。 BCF内cfDNAでの筋緊張性ジストロフィーに対する着床前診断の精度、有用性に対する解析を進める。BCF内cfDNAを用いての筋強直性ジストロフィーの診断は今年度に行った解析方法でも十分に可能と考えられる。今後は、筋強直性ジストロフィーに対する着床前診断で罹患胚の結果のため移植の対象とならず凍結保存されていた胚を用いて解析を行い、BCF内cfDNAでの結果と以前にnested PCRで着床前診断を行った際の結果との整合性について解析し、BCF内cfDNAでの筋緊張性ジストロフィーに対する着床前診断の精度、有用性に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の経費を用いて研究に必要な試薬等の一部を購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度以降に予定している研究(胚生検、WGA、array CGH、PCR等)の試薬の購入費に充てる。
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