廃棄予定の胚盤胞5検体を研究に用い、それらより胚盤胞腔液(BCF)を採取した。BCF採取はすべての胚盤胞で生存性に障害を与えることなく完遂できた。 得られたBCF内のcell free DNA (cfDNA) をwhole genome amplification (WGA)の技術を用いて増幅した。前年度までの研究結果より、WGAの方法としてPicoPlex (RUBICON GENOMICS社)を採用した。WGAにより全てのBCFでDNAの増幅が得られた。増幅後のDNA回収量は平均52.6ng/μlであり、前年度までに行ったmultiple displacement amplification (MDA)を用いたWGAによる結果 (DNA増幅可能率:42.9%、平均DNA回収量:2.87ng/μl) より良好であった。 増幅されたDNAを用いてarray CGHを行い、全染色体の数的異常に対する解析を施行した。全ての検体で解析可能な結果が得られたが、BCFを採取した胚盤胞からの生検で得られた栄養外胚葉 (TE) 5-10細胞、および生検後の胚盤胞 (biopsied BC: bBC) を用いた解析結果との間に乖離がみられた。 増幅されたDNAを用いておこなった筋強直性ジストロフィーのトリプレットリピート領域のfragment解析では、全ての検体で評価可能な結果が得られた。同じ胚盤胞から得られたTE、bBCとの比較では、全ての検体で解析結果が一致していた。 BCF内にわずかに存在するcfDNAを網羅的に均等に増幅するのは困難であり、WGAの方法としてPicoPlexを用いてもarray CGHでの染色体数的異常の評価における十分な結果は得られなかった。しかし、PicoPlexにより増幅したDNAを用いることにより単一遺伝子疾患の診断は十分可能と考えられた。
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