研究課題/領域番号 |
15K10681
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
北脇 城 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00204925)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 子宮内膜症 / エストロゲン関連受容体 / アグリコン型イソフラボン |
研究実績の概要 |
子宮内膜症がエストロゲンの消長とともに増殖・退縮することから、エストロゲン依存性疾患の1つであることは論を待たない。しかし、古典的なエストロゲン受容体(ER)αを介する経路はむしろ少なく、ERβ、オーファン核内受容体であるestrogen related receptor (ERR)α、β、γ、細胞膜貫通型受容体であるG protein-coupled estrogen receptor 1 (GPER1)、そしてERRαの代表的共役因子であるPGC-1αを介する経路による、異常なエストロゲン代謝とシグナル伝達機構が主体であると推定される。本研究では、子宮内膜症由来培養細胞系を用いて、これらの分子制御機構を明らかにし、さらに子宮内膜症の新たな分子標的治療の基礎的な戦略を模索している。 本年度は、弱いエストロゲン作用を持ち、胃腸で吸収されやすいアグリコン型イソフラボンであるアグリマックスのヒト子宮内膜症間質細胞および子宮内膜症モデルマウスにおける薬剤効果を検討した。その結果、アグリマックスは子宮内膜症間質細胞の増殖を抑制、サイトカインやプロスタグランジンE2を抑制した。子宮内膜症モデルマウス実験において嚢胞形成を抑制した。アグリマックスはERβ-NF-κB経路を介して子宮内膜症の細胞増殖を抑制する可能性が示された。 今後は、PGC-1αのアロマターゼ発現を亢進させる作用や、GPER1の非ゲノミック作用によってアポトーシスを誘導する作用に基づいて、新たな治療薬候補について検討を進めていく。アグリマックスは新たな子宮内膜症治療薬としての有力な候補である。基礎的データを完全なものにするとともに、臨床治験への準備を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イソフラボンは弱いエストロゲン作用を持つ植物由来の非ステロイド天然物である。乳癌、前立腺癌、大腸癌を抑制し、更年期症状のホットフラッシュや骨粗鬆症の症状を軽減する。一方でイソフラボンは子宮体癌のようなエストロゲン依存性疾患の発症と関連がある。本年度は、胃腸で吸収されやすいアグリコン型イソフラボンであるアグリマックスのヒト子宮内膜症間質細胞および子宮内膜症モデルマウスにおける薬剤効果を検討した。 アグリマックスは子宮内膜症間質細胞の増殖を抑制、サイトカインやプロスタグランジンE2を抑制した。増殖抑制効果は、ERβアンタゴニストであるPHTPPによって阻害された。アグリマックスはTNF-αによって促進されるIκBのリン酸化を抑制し、p65の核内取り込みを阻害した。子宮内膜症モデルマウス実験において、アグリマックスは嚢胞形成を抑制した。これらのことから、アグリマックスはERβ-NF-κB経路を介して子宮内膜症の細胞増殖を抑制する可能性が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
子宮内膜症性卵巣嚢胞由来の初代培養細胞系を用いて、PGC-1αがアロマターゼ発現を亢進させ、局所のエストロゲン濃度を上昇させている経路を抑制する治療薬の効果を提案していく。 子宮内膜症性卵巣嚢胞由来の初代培養細胞系においてGPER1が非ゲノミック作用によってアポトーシスを誘導する機序に基づいた新たな治療薬候補について検討を進めていく。 アグリマックスは新たな子宮内膜症治療薬としての有力な候補である。基礎的データを完全なものにするとともに、臨床治験への準備を行う。
|