研究実績の概要 |
我々はこれまでにビタミンD(Vit.D)が生殖免疫学的アプローチにより妊孕性維持に関与していることを解明してきた。近年、大規模な疫学研究(Hoogendijk EO et al, Eur J Epodemiol 2016)でVit.Dとホモシステイン (HCY)が負の相関関係にあることが判明し、ビVit.D欠乏によるHCYの蓄積が様々な生活習慣病を引き起こすことがわかった。 一方でメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子変異は、HCYの上昇による酸化ストレスの亢進と血栓形成にも関与する。HCY上昇による着床部位の微細血栓形成は流産の一因となり、MTHFR遺伝子多型は妊孕性低下と関連する可能性がある。以上の背景から、本研究の目的はVit.DとMTHFR遺伝子多型が不育症のリスク因子になり得るか検討した。 不育症患者におけるMTHFR C677T遺伝子多型タイピング、HCY、Vit.Dの関連性検討した。不育症群 (n=77) と流産経験のない不妊症(コントロール)群 (n=29) のHCY、Vit.DをELISA法で、MTHFR C677T遺伝子多型をPCRで評価した。 不育症群において、MTHFR C677T遺伝子多型タイピングのホモ変異 (TT) と比較して野生型 (CC; OR=0.27)、ホモ変異 (CT; OR=0.23) で有意差を認めた (P<0.0001 vs CC, CT) 。HCYの変異アリル数と増加幅とVit.Dの変異アリル数と減少幅はともに有意なトレンドが確認された (P<0.001, P<0.005)。さらにHCYとVit.Dとの間には有意な負の相関を認めた (Rho= -0.43、P <0.001)。Tアレル保因者かつVit.D欠乏がある場合には血中HCYが有意に高かった (P<0.05)。 本成果によりMTHFRC677T遺伝子変異がVit.D不足による不育症のリスクを上げることを実証した。
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