研究課題/領域番号 |
15K10686
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
柳田 光昭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80365569)
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研究分担者 |
荒木 慶彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250933)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 疾患バイオマーカー / 質量分析 / マルチプルリアクションモニタリング |
研究実績の概要 |
妊娠高血圧症候群は母児双方の生命に重大な影響を及ぼす産科重要疾患の一つであるが、その病態生理は不明の点が多く早期診断法もない。本研究では妊娠高血圧症候群をより正確にモニターできる疾患バイオマーカーを確立するため、疾患により変動する血中ペプチドをバイオマーカー候補として同定し、その測定法を確立することを目的とする。平成27年度は先行研究により得られていた疾患マーカー候補ペプチドのうち、アミノ酸配列の決定されている7種類のペプチドについて質量分析装置を用いた定量法の検討を行った。 はじめに各ペプチドの標準品を化学合成した。質量分析装置によるペプチドの定量測定にはマルチプルリアクションモニタリング法が適しているため、各ペプチドのプリカーサーイオンおよびプロダクトイオンの質量値パラメーターをMS/MS測定により決定した。このパラメーターを用いることにより、合成した各ペプチド標準品を検出できることを確認した。 次に、複数のペプチドを一斉分析するための方法として質量分析装置に導入する前段階に用いる液体クロマトグラフィーでの分離条件を検討した。逆相C18カラムを用いた場合、7種類のペプチドのうち、5種類のペプチドについては順調に条件を決定できたが、2種類のペプチドについてはカラムに保持できなかった。そのため、引き続きクロマトグラフィー条件の検討を行うこととした。 並行して、各ペプチドを血液試料から調製する条件を検討した。健常人血清からタンパク質除去処理を行った画分において、測定条件が決定した各ペプチドが存在することが確認された。しかし、回収率などの検討は現段階ではできておらず、引き続き検討することとした。 以上のように、今年度は疾患マーカー候補ペプチドの一斉分析系を構築するための諸条件が決まりつつあり、次年度以降の研究計画につながる実績を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の年次計画では、(I)妊娠高血圧患者血清の採取と病態の把握、および(II)血清ペプチド画分の調製法の確立を行い、さらに(III)妊娠高血圧診断マーカー候補ペプチドのマルチプルリアクションモニタリング測定条件の決定のための標準ペプチド試料の合成と未同定候補ペプチドの配列決定、および、LC-MS/MSによる各ペプチドのマルチプルリアクションモニタリング法の測定条件決定を、H27年度からH28年度半ばにかけて行う予定としていた。 これらの研究計画のうち、(I)患者血清の採取と病態の把握については順調に進行している。(II)血清ペプチド画分の調製法の確立では、各ペプチドを検出できる試料を調製することはできたが、異なる除タンパク法を比較検討することにより、対象ペプチド抽出条件のさらなる最適化を行っている。(III)については配列が決定している標準ペプチド試料はすでに合成済みであり、今後配列を決定するペプチドについては順次合成を進める予定である。 以上のように、本研究は当初の計画に対しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究計画にしたがって研究を遂行する予定である。現在達成されていない項目は、配列未同定ペプチドのアミノ酸配列決定である。配列を決定するには該当するペプチドを抽出して解析する必要があるが、その方法はまだ確立されていない。そのため、種々の抽出法によりペプチド試料を調製し、その試料からデータ依存的MS/MS測定を行い、該当する質量数に相当するペプチドを同定することとする。 H28年度中には可能な限りの種類の診断マーカー候補ペプチドについて測定系を確立し、H29年度初頭には予定通り患者検体の測定を始められるよう計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた絶対定量用安定同位体標識ペプチドの合成について、LC-MS/MS分析条件の決定を見極めたうえで行うことにしたため、その分の費用が先送りとなった。データ解析用PCの購入も解析データが多量に出る時期にあわせて購入することにしたため、その分の費用も先送りとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
LC-MS/MS分析条件が決定した後に必要な安定同位体標識ペプチドの購入に充てる計画である。また、LCの分離条件の検討が十分ではなかったため、そのために必要なカラムや溶媒、LC-MS関連部材の購入費にも一部を充てる予定である。
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