研究課題/領域番号 |
15K10687
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
板倉 敦夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (70262897)
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研究分担者 |
牧野 真太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70570894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質アルギニン-N-メチル基転移酵素 / 遺伝子欠損マウス / 絨毛細胞特異的ノックアウト / 妊娠高血圧症候群 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず絨毛細胞特異的PRMT1 遺伝子欠損マウスを作製する。タンパク質アルギニン-N-メチル基転移酵素(protein arginine methyltransferases 1; PRMT1)は、タンパク質中のアルギニン残基にメチル基を転移する反応を触媒する酵素である。PRMT1は妊娠中の血圧調節に働いていることが推定されており、コンベンショナルノックアウトマウスでは胚性致死となる。そこで、さまざまな臓器で特異的に欠損させたマウスで表現型を確認している。妊娠中の血圧調節には胎盤の関与が強いことから、絨毛細胞特異的なノックアウトマウスを作成し、妊娠中の母獣表現型についての解析を行う。まずは遺伝子発現を欠損させた胎盤の組織学的変化を解析し、さらにその母獣の体重や血圧、胎盤の組織学的変化、胎仔の数、発育の解析することにより、PRMT1 の絨毛細胞での作用を確認する。 マウスの絨毛細胞に発現する遺伝子(Tpbpa:Trophoblast specific protein alpha)のプロモーター下流にCre遺伝子を連接した絨毛細胞特異的Cre発現マウス(Tpbpa-Cre)と、PRMT1アレルへのloxPノックインマウス(PRMT1-flox)とを交配させ、絨毛細胞特異的PRMT1遺伝子欠損マウス(Tpbpa-Cre/PRMT1-flox)を得た。現在までに、絨毛細胞特異的PRMT1遺伝子欠損マウスは胚性致死を示さずに誕生し、繁殖能力も有することを明らかとしている。絨毛細胞特異的PRMT1遺伝子欠損マウスの胎盤を用いて、凍結・パラフィン切片を作製し、絨毛細胞でPRMT1の発現が消失したことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り進捗しているが、当初妊娠中の母獣、胎仔の表現型に変化がみられることが予想されていた。しかし、母獣の血圧変化、胎仔の数、発育の解析をしたところ、絨毛細胞PRMT1欠損は、胎盤構造や絨毛細胞の形態、また、母体の生理学的変化に大きな影響を与えないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
通常のマウスでは絨毛細胞特異的な遺伝子改変による表現型には変化がみられなかったため、妊娠中の異常マウスである妊娠高血圧マウスの遺伝的背景にTpbpa-Cre/PRMT1-flox遺伝子を導入し、妊娠時疾患における胎盤PRMT1の病理生理学的意義を検証する。また、妊娠高血圧では胎盤での血管形成のリモデリング障害が予測されているため、in vivoイメージングを用いて胎盤血管の立体構造解析も同時に進める。 さらに、胎盤でのPRMT1の発現分布、経時的な胎生期での発現変化をみた報告はないため、現在PRMT1遺伝子にLacZプロモーターをノックインした遺伝子改変マウスの胎盤を用いて、遺伝子発現解析・凍結切片上での発現分布解析をすすめている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行はおおむね順調であるが、実験試薬等の消耗品の支出が、当初計画より少なかったために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計画当初の予測と異なる結果となったため、次年度には実験試薬等の消耗品の使用を増加させる必要があり、これに充当する。
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