研究実績の概要 |
胎盤早期剥離は、脱落膜内の血管の破綻、出血が増悪して発症する。胎盤早期剥離の微小な出血を従来の超音波検査など画像診断することは困難であるが、その何らかの微小な変化を捉えて、大きな出血を予測することを目的に検討を行った。前置胎盤の出血も同様に内子宮口付近の脱落膜の剥離によって起こる。警告出血のあった前置胎盤で一度止血するのは胎盤剥離における脱落膜の微小な出血と同様なメカニズムであると考えられる。 微小な出血や血管を同定するために、超音波断層法において、新しいアルゴリズムを用いて組織の動きの特徴を解析することで、その信号を分離することでモーションアーチファクトを大幅に減らし、速度的に組織の動きと重なっている微細で低流速な血流を捉えて画像化することを可能にするSMI (Superb Micro-vascular Imaging) に着目した。今までは、子宮動脈本管や臍帯動脈といった比較的太い、流速の速いところしか描出できなかったが、本法ではより細い、低速な血流を描出できるようになった。また、高周波、広帯域の超音波プローブを使用することで、より繊細な画像を得られることにも着目した。 これらの超音波機器を用いて、かつては描出、区別できなかった胎盤病変を検出できることを示した。娩出してから得られる病理画像を、妊娠中の超音波画像によって先取りできる可能性を示した。胎盤早期剥離や前置胎盤において脱落膜に破綻した血腫を、超音波画像のB-mode, SMIともに欠損像として捉えることで、それらの早期診断に役立つ可能性を示した。
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