研究課題/領域番号 |
15K10692
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
久慈 直昭 東京医科大学, 医学部, 教授 (80169987)
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研究分担者 |
伊東 宏絵 東京医科大学, 医学部, 講師 (00307307)
井坂 恵一 東京医科大学, 医学部, 教授 (10201310)
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (50347225)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マウス / 体外受精 / オクタン酸 / 胚発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、現在アルブミンの安定化剤としてほぼすべての初期胚培養液に添加されている中鎖脂肪酸オクタン酸(以下OA)の、マウス初期胚の増殖・分化、および初期胚から由来する胎仔への影響を検討する。本年度、OA添加血清アルブミンによるマウス胚培養実験に関しては、B6C3F1マウスとICRオスマウスの交配による受精卵を用いて行い、遺伝子組み換えアルブミン(OA不含;IBUKI , BioVerde)にOAを適当量添加してタンパク源として加え培養した。その結果、2細胞期を培養72時間後の胚盤胞発生率はOA不含で77%であったのに対してOA1000μM添加群では100%と高く、一方3000μM添加群では57%と低下した。このことからOAはマウス胚培養における胚発生効率に影響し、非添加群より1000μM程度の添加群でむしろ発生率が高い可能性があり、以後の実験は500-1000μMのOAをIBUKIに添加して行うのが妥当であると考えられた。なお、同位体を標準品として用い、質量分析により測定した体外受精培養液中のオクタン酸濃度は510-806μMであり、遺伝子組み換えアルブミンを用いた培養液であっても624μMと高値であった。このOA(C8:0)濃度は、C10:0からC18:0の飽和脂肪酸濃度が10-100μM程度であるのに比較して高かった。 なおOAのマウス胚への取り込みの確認とその代謝の検討、マウス胚性幹細胞樹立に於けるOA濃度の影響についてはまだ解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度、非放射性同位元素を用いた溶液中のOA濃度測定系の確立に時間がかかったことから、胚培養についての影響解析は終わっているが、そのメチル化解析・胎仔への影響、およびOAの細胞への取り込み・ES細胞培養系へのOA添加の影響までの解析することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降、共同研究者としてin-vivo胚と比較してマウスin-vitro培養胚ではマウスの出生体重は変わらないが、出生後1年までの体重に差があることを証明した新潟大学の小田佳奈子氏を加え、OAのマウス初期胚増殖・分化への影響を胚盤胞までの胚発生(胚発生速度および内細胞塊・栄養膜細胞の細胞数計測を含む)と、これらの胚から由来する出生仔について臓器別重量解析・メチル化解析(H19、Snrpn、Peg3のメチル化)を含めて行う。また胎仔を発生する内細胞塊細胞への影響を解析するため、国立成育医療センター阿久津英憲博士の協力を得て各種濃度OA添加培養液によるマウス胚性幹細胞樹立効率を解析するとともに、すでに樹立されているマウスES細胞株を用いてOA添加による増殖能・全能性解析を行う。さらに、すでに樹立されているマウスES細胞株および当院で継代培養している癌細胞株を材料に、非放射性同位体を用いて培養液に添加したオクタン酸の代謝的運命、特にエネルギー代謝に用いられるものと膜分画等の細胞構成物合成に利用されるものの比率を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度、非放射性同位元素を用いた溶液中のOA濃度測定系の確率に時間がかかったことから、胚培養についての影響解析は終わっているものの、そのメチル化解析・胎仔への影響、およびOAの細胞への取り込み・ES細胞培養系へのOA添加の影響までの解析することができなかった。このため、主に初期胚培養・採取にかかるはずであった研究費用が使用できず、次年度使用額として計上することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度、OAのマウス初期胚増殖・分化への影響を胚盤胞までの胚発生(胚発生速度および内細胞塊・栄養膜細胞の細胞数計測を含む)と、これらの胚から由来する出生仔について臓器別重量解析・メチル化解析(H19、Snrpn、Peg3のメチル化)を含めて行うが、平成27年度に生じた次年度使用額はこの中でマウス購入費・飼育費および採取・培養にかかる諸経費として使用予定である。
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