研究課題/領域番号 |
15K10693
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
兼子 智 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (40214457)
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研究分担者 |
高松 潔 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (30206875)
吉田 丈児 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (70191591)
小川 真里子 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (40296653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精子 / 顕微授精 / DNA断片化 / 人工卵管 / 妊娠 |
研究実績の概要 |
我々はICSI回避を目的として、1.精子の高精度調製 (DNA断片化陰性運動精子の無菌的調製)、2.機能形態情報による精子品質管理(DNA断片化、頭部空胞、先体反応誘起能等)、3.高効率な精子凍結保存、4.人工卵管による必要精子数の低減、5.精子薬物療法によるin vitro先体反応誘起、を統合的に運用する高効率媒精システムを確立した。今回、項目1, 2, 4を250例に406周期施行し、妊娠転帰が確定した57症例(計70例:2回妊娠11例、3回妊娠1例を含む)の成績を報告した。57症例中55症例は前医にて1-40 (9.3±8.6) 回ICSIを施行せるも妊娠しなかったが、このシステムでは70例の妊娠が得られ、49例が正常経腟分娩、2例が帝王切開術にて出産した。一方、19例では胎嚢確認後、流産 (27%) となった。分娩群、流産群の調製後精子濃度、運動率は両群間で差異はなかったが、年齢は40.1±2.09、42.7±3.37歳、ICSI施行回数6.7±3.5、15.8±13.6回、人工卵管周期における妊娠までの施行回数1.9±1.1、1.9±1.0回、採卵数/分割胚数はそれぞれ3.8±1.6/2.9±1.3、2.7±1.4/1.9±1.0と流産群は分娩群に比して、年齢、ICSI施行回数が有意に高く、分割卵数は有意に少なかった。受精率は約77%と両群間でほぼ同じであった。ICSI反復不成功例においても、本研究で確立した高効率媒精システムの統合的運用により、精子選別精度の向上と人工卵管による媒精下限値の低下の効果から妊娠に至る可能性があると考えられた。
精子DNA損傷の定量的評価を目的としてビタミンCによる活性酸素生成の影響を観察し、養老依存的にDNA切断数が増えることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は基礎研究を行い、2,3年時に小規模臨床応用に着手する予定であったが、初年度から基礎研究と平行して開始した臨床応用の結果を学会発表することができた。 研究計画に記した精子選別の高度化と人工卵管を用いる高効率媒精により、顕微授精反復失敗高齢婦人の出産が可能であることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年次に予定した精子精密検査については、DNA断片化測定法の測定感度を確認する感度確認様標準品を確立する。さらに精子凍結保存の高効率化において、授精法別(人工授精、体外受精、顕微授精)に最適化された精子凍結保存法を確立する。人工卵管のデザインに関してもさらに最適化を図り、受精効率の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では 初年度は基礎研究を中心に行う予定であったが、第3年度に予定していた小規模な臨床応用を前倒しで施行し、その結果から研究の方向性が確定した。これにより計画調書で想定した研究の方向性を調整して2年次以降基礎研究を行い、臨床結果の妥当性を補佐する。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に 初年度に予定してた 電気泳動機器の試作とシステム化を行う予定である。
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