研究課題/領域番号 |
15K10693
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
兼子 智 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (40214457)
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研究分担者 |
高松 潔 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (30206875)
吉田 丈児 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (70191591)
小川 真里子 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (40296653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒト精子 / 頭部空胞 / 不妊治療 / 男性不妊 |
研究実績の概要 |
我々は、Reactive Blue2(RB2)を用いた希薄染色法による空胞の可視化を報告した。今回、染色条件を詳細に検討した結果、pH10で染色を行うとプロタミン化した成熟精子頭部外周形状と内部空胞を選択的に可視化できることを見いだした。精液、洗浄精子、さらに対比細胞(白血球)はスライドグラスにスメアし、メタノール固定した。染色機序を検討するため、RB2と同様に分子内に3個の硫酸基を有するAniline Blue(AB)の染色態度を比較した。0.01% RB2またはAB 0.1M炭酸緩衝液、pH10で10分間染色後、余剰色素を洗浄して明視野顕微鏡(x1000)で観察した。 RB2、ABともに精子頭部を青染して内部空胞を白色スポットとして可視化したが、尾部は染色されなかった。ヒト精子頭部の外周形状と内部空胞の出現頻度は個人差が大きく、内部空胞の形状、数は精子間差が大きかった。両者とも、ヒストンを核蛋白とする白血球は染色せず、2M NaCl存在下では精子への染色性を失った。精液に対しては、RB2は精子のみを染色したが、ABは精液内の多様な細胞、球状粒子を青染した。この差は両者の分子構造の違いに起因すると考えられる。 ヒストン、プロタミンの主たる構成アミノ酸はリジン(側鎖アミノ基)、アルギニン(グアニジル基)である。pH10においてアミノ基は分子型、グアニジル基はイオン型として存在する。高濃度の塩存在下における染色性の消失は、精子頭部の選択的な青染は分子内の硫酸基がプロタミンのグアニジル基とイオン結合することによることを示唆している。簡易なRB2単染色によりプロタミン化成熟ヒト精子頭部外周形状と精子内部空胞の特異的観察が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
reactive blue2を用いヒト精子頭部外周と空胞の同時染色が可能となった。さらに種々の細胞が混在する精液において、成熟精子の選択的染色が可能となった。 本研究の課題である人工卵管を用いる高精度体外受精法の実施にあたり、本法と顕微授精法の適応と鑑別に関して精子側の検査法が出そろい、実際の症例集積を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は研究最終年度にあたり、一般施設から医師、検査技師を受け入れ、多くの施設で実施可能なようにトレーニングををおこなう。 当初計画と異なる点は、精子側の分離、検査技術の進歩により治療困難例という概念の導入をせまられている。すなわち、精子の状態が悪すぎて、とてもじゃないが顕微授精すら実施不可能という状況をどのように患者に説明するか 婦人科、泌尿器科両者でガイドライン策定が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に記載した基礎研究の進行状況が速やかであり、第3年度に予定していた小規模臨床を初年度から開始し、症例集積が進行しており、少額の予算で研究を実施できた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は研究の最終年度に当たり、開発した精子精密検査をどのように組み合わせ人工授精、体外受精、人工卵管、顕微授精に振り分けるかの判断基準(診断基準)を策定する。さらに研究の過程で、精子頭部空砲の画像解析による定量化研究が開始された。予算はこの2分野に使用予定である。
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