研究課題/領域番号 |
15K10694
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
田村 和広 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70281409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胎盤絨毛 / 子宮内膜 / インフラマソーム / IL-1β / α1-アンチトリプシン / ダメージ関連分子パターン / 病原体関連分子パターン |
研究実績の概要 |
胎盤絨毛は、TLRを介して炎症性サイトカインやケモカインを産生することが知られている。このTLRシグナリングの変化は、早産を招く絨毛膜・羊膜炎に代表される胎盤の炎症や慢性炎症を特徴とする子宮内膜症に寄与する可能性が考えられる。そこで、胎盤におけるインフラマソームの意義を検証するために、NLRP3インフラマソーム関連因子に及ぼす病原体関連分子パターン(PAMPs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs)の効果を検討した。末期胎盤から単離・培養したヒト絨毛栄養膜細胞をLPS(PAMPs)、ATP(DAMPs)、またはNLRP3インフラマソーム活性化因子・ナイジェリシンで処置した。栄養膜細胞のインフラマソーム構成因子並びに炎症性サイトカインの発現を解析した。qRT-PCR法により検討したところ、インフラマソーム関連因子であるNLRP3並びにカスパーゼ1の発現は、マクロファージ細胞株U937の約1/3程度であったが、IL-1β発現はLPSに応答して著しく上昇した。なお、ジブチリルcAMP(Db-cAMP)で分化誘導するとこれらNLRP3, カスパーゼ1, IL-1βの発現は、著しく低下した。また、LPS/ATP処置は、活性型カスパーゼ1蛋白質(p20)量と共にIL-1β放出量を増加させた。ナイジェリシンは、IL-1β分泌量を増加させたが、インフラマソーム阻害薬・グリベンクラミドは、ナイジェリシンまたはLPSとATP共処置によるIL-1β放出を抑制した。以上の結果から、胎盤絨毛栄養膜細胞においてTLR4を介するインフラマソーム系が機能しており、特に妊娠早期の未分化な細胞では、早産と関わる絨毛炎症の病態生理機構に関与する可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト絨毛癌細胞BeWo細胞や絨毛外栄養膜HTR8細胞を用いた検討では、カスバーゼ1やインフラマソーム関連因子の発現が低く、検出が困難であった。現在、初代培養細胞(胎盤絨毛と子宮内膜間質細胞)を中心に検討しているが、合併症を有さない帝王切開による正常分娩胎盤の入手の困難さもあり、予定する全ての実験を遂行することができなかった。また、個体差も原因の1つと考えられる実験間でのデータのばらつきもあり、再現性の確認に時間が費やされた。
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今後の研究の推進方策 |
不死化子宮腺細胞(EM-1)を用いた検討に加えて、HMGB-1とPGE2処置によるインフラマソームの活性化、インフラマソームアダプタータンパク質ASCのノックダウンの影響を直ちに検討したうえで、予定通り28年度の実験計画であるα1-アンチトリプシンとの関係の検討に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した初代培養実験の細胞採取が滞ったため
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次年度使用額の使用計画 |
初年度成しえなかった当初の研究調書の予定していた実験項目を遂行する。
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