研究課題
早産・感染モデルマウスを構築し、早産・子宮内感染によって神経発達に障害を及ぼす現象が未熟性によるものか感染・ 炎症によるものかを解析し、早産における児の神経発達障害の予後改善・予防に繋がる要素・因子を見出すことを目的として胎生15日目(E15)の妊娠マウスの子宮内胎嚢間にLPS (Lipopolysaccharide)を投与し、投与量を規定するとともにLPS投与翌日(E16)、および生後1~2日目(P1~2)における新生児から取り出した脳の炎症の程度をRT-PCRを用いて対照群と比較した。対照群としてはLPSに代えて無毒化したLipopolysaccharides Detoxified(Dtx)を用いた。投与量として0.01~0.1μg/damの間に流産しないLPSの濃度の上限が見出され、E16の脳の炎症性遺伝子群の発現が有意に増えていることが判明し、P1~2においては炎症性遺伝子群の発現はむしろ下がっていた。今回検討した炎症マーカーの中でIL-6が最も顕著に炎症反応を呈した。さらに大脳組織における大脳6層構造での細胞移動においてE16においてはLPS投与における細胞移動に関して大きな差異は認めなかったが、P2においては大脳組織における大脳6層構造での細胞移動のばらつきが観察され、感染による炎症反応によって大脳組織における大脳6層構造での細胞移動が障害されている可能性が示唆された。マウスの子宮内感染・早産モデルにおいて胎生期において炎症反応が亢進したにもかかわらず、生後は減弱したのはLPSを投与してから自然免疫が反応し生まれるまでに免疫反応が治まったと考えられる。LPS刺激による子宮内感染によって大脳における炎症は胎生期から出生にかけて一旦終息するものの大脳組織に対する影響は継続し、新生児の脳に影響すると考えられた。