研究課題
新生児ヘモクロマトーシスは原因不明の極めて稀な難病である。発症頻度含め本邦における実態が不明であるため,年間発症数・発症率を推定するための全国一次調査・二次調査である「新生児ヘモクロマトーシスに対する実態調査」研究を,自施設の倫理委員会の承認を得て昨年度行った. この調査にて知り得た全35例の本邦の新生児ヘモクロマトーシス症例のうち,2010~2014年の5年間の症例について詳細な三次調査を行い,各症例の臨床経過についてデータ収集を行った.現在,収集した症例データについて解析・検討を行い論文執筆準備中である.さらに,この中の1家系(合計3家系目)において同意を得て家系のゲノムDNAを収集し,エクソーム解析を開始した.同時に蛋白同定に必要な母体血清の収集も行った.一方,新生児ヘモクロマトーシスに対する本邦での肝移植の実施数を調査するため,上記二次調査・三次調査に加え,日本肝移植研究会の協力を得た.2008年~2015年における移植数が15例であることを把握した.これらの症例の一部に対しては,摘出肝臓標本につき当該研究へ検体提供へのご協力を依頼した.また,本邦における新生児ヘモクロマトーシスに対する胎内IVIG療法の既実施8例の詳細についても全国調査を行い,投与期間中の血中IgG濃度の薬物動態について解析を行った.この成果は第69回日本産科婦人科学会学術集会で発表した.同内容は現在,論文執筆中である.
3: やや遅れている
研究申請時の計画であった,平成28年度の「エクソーム解析による候補遺伝子絞込み」に関しては3家系目におけるゲノムDNAを収集し,ライブラリー調整とシーケンシングを行った.また,今後の解析のための更なる検体収集につながる全国調査(三次調査)を実施し,希少症例における複数独立家系の収集の足がかりとした.
現在,シーケンシングまで実施した独立3家系におけるデータの解析,候補遺伝子の検索を行う.さらに,同疾患の別家系を全国より収集し,エクソーム解析による原因遺伝子の絞込みを行い,確定診断のための母体抗胎児肝細胞IgG抗体の同定方法の開発へ向け,基礎資料とする.また,母体血清が集まりつつあるため,これを一次抗体とした蛋白同定の実験系も順次進めていく.
in vitro解析による原因蛋白同定が困難と判断したため,エクソーム解析の結果を待つこととした.エクソーム解析は自施設で実施しているが,他研究と解析機器を共有しているためシーケンシングを終了するために時間がかかっている上に,既に解析の終了した2家系のみでの候補遺伝子絞込みでは十分な効果が出ず,さらに,追加の独立複数家系のゲノムDNAのエクソーム解析の結果も踏まえて再度,候補遺伝子を絞り込むこととした.よって,iPS細胞作成を含めたin vitro解析で使用する予定であった予算を,次年度に繰り越した.
現在,追加で独立2家系のゲノムDNAを確保でき,現在エクソーム解析の解析ラインに乗っている状態である.これらの4家系の解析結果をもとに,平成28年度にin vitro解析で使用予定であった予算を用いて原因蛋白の絞込みと同定を行う予定である.
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J Pediatr Gastroenterol Nutr
巻: 63 ページ: e121
10.1097/MPG.0000000000001265