研究課題/領域番号 |
15K10697
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
董 培新 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (50602504)
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研究分担者 |
櫻木 範明 北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (70153963)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 遺伝子 / microRNA / EMT |
研究実績の概要 |
本研究では、iASPP遺伝子を強制発現と特異的に抑制することで、子宮頸癌の進展と転移におけるiASPPの機能解析を分子レベルで明らかにした。具体的には、まずiASPP遺伝子を組み込んだ発現vectorまた特異的にiASPP遺伝子をノックダウンするsiRNAを、子宮頸癌細胞株にtransfectionを行った。そして、iASPP遺伝子発現レベルの変化をRealtime PCR及びWestern blot法により解析し、iASPP遺伝子発現の変化を確認した。次は、iASPPの強制発現と抑制は、どのように頸癌細胞の悪性形質に与える影響かについて、癌細胞の形態を顕微鏡で観察して、癌細胞悪性形質の変化をinvasion assayなどで解析を行、またEMT関連遺伝子の発現をWestern blot法により解析した。結果として、iASPPの強制発現により頸癌細胞株HeLaとSiHaをはじめ複数の癌細胞株で、癌細胞株の遊走能と浸潤能は増加し、上皮マーカーのE-cadherinとZO-1発現低下と間葉系マーカーのVimentin、Twist1とZEB1発現上昇がみられ、EMTに特有の形態変化を引き起こし、EMTが誘導されたことを確認した。逆に、iASPPの発現を特異的に抑制すると、EMTの形質を逆転さえることが明になった。更に、iASPPの過剰発現と発現低下による癌幹細胞様形質をsphere formation assayによって解析し、抗癌剤に対する耐性をcell counting Kit-8で検討した。これらの実験において、iASPPの発現を抑制すると、sphere形成能が低下し、タキソール耐性も減弱し、癌細胞生存率が低下することが確認できた(Scientific Reports 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮頸癌発生及び進展に関与するiASPPの役割の解明において、iASPPはEMTなどの悪性形質を増強することで頸癌の進展に寄与していることを解明したことから、計画通りに研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
子宮頸癌において、iASPPとp53の結合があるのかを明確にするため、iASPPの免疫沈降を行い、沈降物のWestern blot解析はp53抗体を用いて行う。iASPPはp53遺伝子の転写能を阻害するのかを、p53とその下流標的であるp21、Bax、PUMA promoterとの結合能をクロマチン免疫沈降法により分析する。更に、luciferase assayを用いて、p21、Bax、PUMA promoterの転写活性を解析して、iASPP発現の低下は、p53遺伝子の下流標的遺伝子群を再活性化させるのかを明らかにする。p53が細胞内の遺伝子発現制御において重要な役割を持つmicroRNAの転写と発現を制御することが知られている。子宮頸癌では、iASPPは野生型p53を介してmicroRNA発現を制御することで、癌関連遺伝子群の発現を間接的に変動させる可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は計画通り進展しており、論文の発表にも費用を要する予定である。子宮頸癌発生及び進展におけるiASPPの分子メカニズムの解明に必要な試薬を購入する必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を報告するための学会参加を予定している。論文掲載料に充てる予定もある。また、クロマチン免疫沈降キット、PCRアレイキット、microRNA解析用試薬と癌細胞株の維持に必要な物品の購入に使用する予定である。
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